いまさら人には聞けない!微生物のお話【第28回】

10)EO滅菌工程の概要

EO滅菌のプロセスは、複雑なパラメータを組み合わせて設定されるため、工程の詳細は対象製品ごと、事業所ごとに変わります。工程パラメータの実際の設定方法は、装置により変わります。
以下にEO滅菌のステップの一例を示します。

(1) プレコンディショニングが必要な場合は、それを行う。この工程は製品の状態を一定にすることが目的のため、プレコンディショニングを行う部屋あるいはチャンバーの温度、湿度の範囲を決め、その上でプレコンディショニング時間の上限、下限を決める。さらにプレコンディショニングルームからの製品搬出から滅菌器に搬入し滅菌を開始するまでの時間を決めておくことが必要。

(2) 滅菌装置の運転条件を予め決定された工程に設定しておく。また滅菌装置のジャケット、ガス気化器、クリーンスチーム用ボイラー等をあらかじめ既定の状態に調整しておく。

(3) 予め決められた要領で製品を滅菌器に搬入・積載し、必要なバイオロジカルインジケータやセンサー類を設置し、滅菌器扉を閉鎖する。なおプレコンディショニングを行う場合には、必要なBIやサンプルは製品と一緒にプレコンディショニングを行うこと。

(4) 滅菌のスタート。ここからプロセス完了までは、多くの場合、工程は自動的に進行するようコンピュータ等でコントロールされます。工程中の温度や圧力などのプロセスパラメータも自動的に記録されます。いずれかのパラメータが設定範囲から外れた場合には、工程を自動的にキャンセルするなどのプログラムが組み込まれる場合もあります。
以下にプロセスの一例を示します。これは滅菌工程の一例ですので、使用する滅菌装置の仕様、対象製品、ガスの種類などにより、工程は大きく変わってきます。

①    減圧工程。真空ポンプにより、滅菌器缶体を減圧する。

②    減圧下でクリーンスチームを投入する。この工程で製品の温度が一定になる。また滅菌に必要な湿度を与える。

③    滅菌器のリークをチェックするため、真空ポンプ、ガス、水蒸気等をすべて停止し、一定時間保持し、この間、滅菌器内の圧力変化をモニターする。

④    リークがないことを確認した上で、EOをガス気化器にて気体状態にしながら一定の圧力になるまで投入する。

⑤    一定の圧力になった時点でガス供給が停止し、その時点で滅菌タイマーがスタートする。あらかじめ決められた時間、滅菌処理を行う。この間、缶体の圧力が下がった場合には、元の圧力になるまでガスを投入する。(ガスメイクアップ)

⑥    一定時間経過後、EOガスを排出し、さらに真空ポンプで減圧していく。 排ガスは適切な方法注)で処理する。

⑦    フィルターを通した空気または窒素ガスを投入する。必要に応じて、この工程を繰り返す。

⑧    あらかじめ決められた工程がすべて完了したら、フィルターを通した空気で缶体圧力を大気圧まで戻す。滅菌工程の完了。

注)滅菌工程後のEOの排出時には、適切な方法でEOを無害化しなければなりません。 排気ガスを希硫酸槽を通してエチレングリコールに変化させ排出する方法、燃焼させる方法、触媒を通して無害化する方法、EOを回収し再利用する方法など様々な方法があります。滅菌装置メーカーやガスメーカーはさまざまなノウハウや装置をもっていますので、適切なものを導入する必要があります。

(5) 作業者はEO用のガスマスクを装着した上で滅菌器の扉を開け、製品を搬出する。またバイオロジカルインジケータ、試験用サンプル、保存サンプル等を取り出す。

(6) さらに残留物を減少させる必要がある場合は、指定エリアに移動し、既定の条件でガス抜きを行う。

上記の工程のプロファイルは、以下になります。

図 33  エチレンオキサイド滅菌工程の一例

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