医薬品開発における非臨床試験から一言【第33回】

ラット腎不全モデルの作成

ラットを用いた非臨床試験において、腎不全をテーマに薬理あるいは薬物動態の研究を行う場合の、実験モデルについて考えてみます。急性腎不全モデルとしては、虚血再灌流法があり、慢性腎不全モデルは、外科手術により腎臓を摘出する手法と薬物投与による手法があります。モデル作成後は、腎不全の状態を経過観察して有効性を探ります。実験手技の基本、そして応用、解析などを取り上げます。

急性腎不全の病態は、エンドトキシンショックなどによって、急激に腎機能が低下し、尿素窒素(BUN)やクレアチニンの血中濃度が上昇し、電解質代謝の異常とアシドーシスなどの症状が現れます。そこで、虚血再灌流による急性腎不全モデルを用いた研究が役にたちます。

SD系ラットにネンブタールで麻酔し、側腹切開にて右腎を露出します。腎臓の動静脈と尿管を結紮後に右腎を摘出して閉腹します。ラットを代謝ケージに移して1週間の飼育により回復させます。次に、ラットをネンブタール麻酔下、側腹切開にて左腎を露出します。腎臓の動静脈を露出させて、外科用クリップで血流を遮断し、45分間、虚血状態にします(試験目的により、虚血時間を調整)。クリップを外して、血流を再開し、目視で腎臓の再灌流を確認して閉腹します。動物を代謝ケージに戻して、開発品を用いて急性腎不全後のモデル治療を行います。

慢性腎不全モデルとして、5/6腎摘出ラットの作製について示します。基本的には、一方の腎臓の2/3を切除し、回復後に他方の腎臓を摘出します。この過程は、幾つかの手法がありますが、我々の手法を示しておきます。比較的簡単な手術ですが、侵襲を上手く抑えて行うと、状態のそろったモデル動物になります。

実験には8週齢のSDラットを用い、ジエチルエーテルで麻酔し、側腹切開にて右腎を露出します。腎臓の動静脈を縫合糸で結紮し、上側1/3と下側1/3をアルコール滅菌したカミソリで切除し、右腎の1/3を残します。出血を拭った後に外科用アロンアルファを塗布して止血し、乾燥後に動静脈結紮を解除して血流を回復します。この時に腎臓から出血が無ければ大成功です。手術侵襲を回復させた1週間後に、再度ジエチルエーテルで麻酔して、腎臓の動静脈と尿管を結紮して、左腎を全摘した後に閉腹します。

偽手術(Sham)群は、開腹手術による両腎の露出のみとします。ラットはすべて代謝ケージにより飼育管理を行います。麻酔はネンブタール麻酔でも可能ですが、エーテル麻酔の方が覚醒後の状態が良いように思います。また、腎臓を(2/3+1)摘出することで、5/6腎摘出慢性腎不全モデルとなります。別法として、3本の腎動脈のうち2本を結紮する方法も報告されています。また、術後に腎機能の不全状態を尿蛋白で観察します。
 

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