私が経験したGMP、(@独り言)【第5回】

2022/05/27 品質システム

品質保証に係る業務を担当する組織について。

品質保証に係る業務を担当する組織 -QAになったら-

 

FDA体制のGMP下にあるシアトルの関連子会社で書かれた医薬品品質システムの文書を開示してもらい、いわゆる日本版のSOPに書き直して、GMPのシステムを立ち上げるという業務に携わることになった頃のこと、もらった文書の中で、まず組織図に目を見張った。日本の医薬品GMPの組織では、工場長や製造管理者の下に大きく二つのグループ、製造部と品質管理部がおかれていたのだけれど、その組織図は三つの大きなグループ分けをしていたのだった。製造グループと品質管理グループと、もう一つは品質保証グループである。この組織図には品質管理と品質保証は、きっちり分ける必要があるのだ、ということが明確に示されていたのである。(組織図添付)
 
開示された組織図には、最高責任者である経営者の下に製造:Mfg. (Manufacturing)、品質管理:QC(Quality Control)、品質保証:QA(Quality Assurance) の3つのグループが横並びに組織されていた。Mfg. グループはその名の通り製造施設設備の管理と製造工程に関する業務を担い、QCグループは試験検査に関する管理や業務を担っている。そしてQAは、Mfg.とQCの双方の活動全体をモニタリングし、それが法規制&GMPの面から、また社内で定めた規則・基準に沿って評価して、適切な製品が製造販売されることを保証する。
 
これらの3つのグループにはそれぞれに責任者:ダイレクター/マネージャーが置かれていて、それぞれの責任者は、学歴経験、就労経験により資格化され、グループごとに大きな権限をもっていた。特にQAダイレクターは、製品の品質に関することには経営者と同等ともいえる強い権限を付与されていて、その分、「判断を間違えて、品質上の大きな問題が起きたときは、クビが飛ぶのだ」とシアトルのQAダイレクターは当たり前のように話していた。今思い起せば、前職の日本の医薬品メーカーでも、当初は組織の区分が二つだったが、品質保証という部署ができて、何人かの担当者が活動を始めていたような記憶はある。ただ、この頃の筆者の感覚では、品質保証という業務は「お客様相談室」のようなもので、外部からのクレームやトラブルの対応をするところ、という認識しかなく、どのような業務をしているのか関心を持つことがなかったので、理解もしなかった。
 
令和3年のGMP省令の改正で、日本でも「品質保証に係る業務を担当する組織」つまりQAの組織を設けることが規定された。PIC/S GMPガイドラインが適用されるようになってから、製薬各社でQAを組織する動きはすでに進められていたので、さほど影響は大きくなかったと推測している。しかし、人的資源に限りがあり、組織として分離することが難しい企業では、QCにQAの業務を担わせてきたところもある。そういうところでは、新たに組織しなくてはならないことになって、苦労もあったのではないだろうか。今ではQAの組織はどこでももたれているだろうけれども、その企業の中でQAの意見が重要視されているかどうかについては様々なように感じている。
 

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執筆者について

佐藤 小津江

経歴

1985年より4.5年間動物用医薬品の研究開発及び品質管理業務を経て、1988年より12年間、医療用医薬品(注射剤)の品質管理、研究開発とGMP整備業務に携わる。2002年より8年間、経皮吸収型製剤の分析評価業務と治験薬GMP体制整備に従事。2013年生物由来原薬、製剤、無菌原薬の製造販売業にて品質保証部業務と品質管理責任者を兼務し、2016年退職。株式会社シーエムプラスに入社。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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