製薬会社のコンプライアンスに関する5つの失敗を避けるために

記事投稿:マスターコントロール株式会社

製薬業界は、厳しい規制要件と品質要求事項を満たさなければなりません。製薬会社による5つの間違いは規制/基準の遵守(コンプライアンス)への取り組みを妨げかねず、検査不合格品の発生につながる可能性があります。ここでは、これらの間違いを回避するためのヒントと、デジタル化を通じて安全で効果的な製品を迅速に市場に投入するための方法をご紹介します。

品質部門が社内にあったとしても...
製薬会社に品質部門(QU)があればすべてが片付く訳ではありません。問題は、QUに対する権限の委譲(エンパワーメント)です。もしQUに権限がなく、経営陣が品質に関する決定を覆して製品を拒否することができるなら、その会社にはQUが実質的に存在しないことになります。確かにQUはビジネスニーズと品質ニーズをうまくバランスさせることができ、このバランスは公衆衛生、顧客ニーズ、会社の信用に係わるリスクを比較考量したものです。QUによるそうした難しい決定は、その根拠を示すために必ず文書化される必要があります。デジタル化された品質管理システム(QMS)はQUの業務を直ちに自動化するものではありませんが、デジタルソリューションに組み込まれた許可の仕組みのもと、QU内で権限を付与された個人のみがバッチリリースを承認して、全ての電子文書を中央のある場所に保存することが可能になります。

不十分な文書化慣行
QUは「文書化警察(文書化を厳しく要求する人々)」で構成されていると不満を言う人がいるかもしれませんが、文書化の負担は確かに苛立ちを招きます。文書が最初から適切に作成されるようにするには、一貫した良好な文書化慣行を維持することと、医薬品の品質記録を扱う全従業員にデータインテグリティ(データの整合性)に関するトレーニングを施こすことが極めて重要です。
薬剤品質に係わる業務を行う人はみな、ALCOAという略語が何を表すかを知っておく必要があります。これは帰属性、読みやすさ、同時性、原本性、正確性を意味する英語の頭文字を取ったものですが、製薬会社のデジタル化されたQMSは、その各ステップを適切に文書化するのに必要なアクションを強制的に実行することができます。加えて、電子システムがレビューバイエクセプション(例外によるレビュー)のワークフローを通じてより良い文書化を促進するのに役立ち、その結果、迅速かつ整然と文書化されたバッチ文書が作成されます。

不十分な調査
間違ったら素直にそれを認めましょう。間違いについて調査することは、製薬会社が誠実さへのコミットメントを最優先していることを示す一つの方法です。製薬会社がデータの整合性にこだわりすぎると却ってこれが損なわれることがあり、この場合は無数の学習機会が失われるので特に残念な結果になります。不適合を罰する企業では、ミスを表に出して修正するのではなくそれを隠蔽するインセンティブが生み出されます。組織が誠実であることを約束すれば、製品やプロセスの不具合や不適合はそれらの性能改善の機会として扱われ、医薬品の品質基準を高め、消費者によりよい結果をもたらすことにつながります。
根本的原因に対応できない調査は効果がなく、同じ問題を何度も繰り返すことになります(冗長性ですね)。品質管理ソフトの調査票は、電子フォームに必要な項目を入力することで、正確な情報を網羅的に調査することができるため、徹底した調査が可能になります。

定期的なレビューを怠ると...
製薬会社は年次の製品レビューを法規制に応じて実施する必要がありますが、定期的なバリデーションと継続的なプロセス検証も同様に重要です。システムが検証され制御されていることが判るのは喜ばしいことですが、検証され制御されたプロセスに不具合が生じなかった点を確認することがより重要になってきます。定期的に医師の診察を受けて問題がないことを確かめることが重要なのと同様に、品質管理システムの場合もこれを定期的に見直すことが重要です。

プロセスの不備の結果として、危険な医薬品が生み出されることがあります。品質管理ソフトウェアは、システム内のカレンダーに入力することで定期的な活動を促すことができるので、もう日付を見逃すことはないでしょう。コンピュータ化されたシステムには検証が必要なため、定期的な見直しが、デジタル化された特定のソリューションにも適用されます。

医薬品のサプライチェーンにおける課題
米国医薬品サプライチェーン安全保障法(Drug Supply Chain Security Act)がまもなく最終的な実施段階に入りますが、製品の安全性を確保するためには、追跡機能(track & Trace)以上のものが必要になります。サプライチェーンはサプライヤーから始まり、エンドユーザーまで続きます。従って、原材料供給者や取引先が安全で効果的な製品を提供するための要件を満たしていることは、品質要求事項への適合に向けた取り組みにとって不可欠です。

製造委託先は製品の品質において重要な役割を果たすため、彼らを監督することが特に必要です。川下のサプライチェーンパートナーの場合、彼らが適切に登録されている必要があるだけでなく、特に処方薬については、彼らが製品の影響評価(Product Impact Assessment)を受けていることを確認することが重要です。サプライチェーンパートナーが貴社による検査を拒否した場合は、新たなサプライヤーを探す時期に来ているかもしれません-このことは覚えておいてください。

デジタルでアクセスできる更新可能なサプライヤー文書の適切な追跡および、バーコードラベルの追跡のために、デジタル化された品質管理システムを利用してください。容易に検索が可能なリポジトリにあるサプライヤーファイルは、企業が最も高く評価するビジネスパートナーを、将来のプロジェクトで活用しうる者として位置付けるのに役立ちます。

 

著者のご紹介
Regina Fullin

Regina Fullin は、Compliance Team, LLC の規制関連業務および品質保証コンサルティング担当副社長です。彼女は規制遵守に関するコンサルティングとプロジェクトマネジメントの経験を有し、増え続ける規制遵守、プロセスコントロールおよび製品品質面の課題を達成するための強固な品質システムの開発と実施について、顧客に助言と支援を提供しています。レジーナの専門分野は、品質システムの監査と開発、是正/予防措置(CAPA)/品質調査、サプライチェーンのシリアル化要件への適合、データの整合性、苦情処理、コンプライアンス違反に係わる是正計画の策定と検証などです。彼女は、製造業者が品質システム方針と製品品質を改善し規制面および業界の最新動向を把握できるよう、適切で有意義な記事を執筆しています。レジーナは、ASQ の 認定品質エンジニア(CQE)、認定品質監査人(CQA)ならびに認定品質/組織エクセレンスマネージャー(CMQ-OE)の資格を有しています。


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