医薬原薬の製造【第21回】

2016/12/15 原薬

マイクロリアクター
 
少量生産のファインケム産業で連続プロセス、連続反応のメリットが余りないことを説明してきました。第18回で説明したように、マイクロリアクターの特徴は以下の2つです。
     反応系がミクロである。
     反応は連続的である。
 
反応が連続であることについてそのメリットは小さいことを前項では述べましたので、マイクロリアクターのメリットは反応系がミクロであることに集約されることになります。次に反応系がミクロであることのメリットについて考えてみます。
 
工業的利用レベルまで達している市販マイクロリアクターにLonza社のマイクロリアクターがあります。この会社はあちこちで講演、論文発表を行って、マイクロリアクターの普及、販売に勤めています。この会社は以下のようなことを言っています。
有機反応は反応速度によって以下の3つに分類できる。
     Type A 非常に速い反応。反応半減期が1秒以下。
     Type B 早い反応。反応半減期が1秒以上、10分以下。
     Type C 遅い反応。反応半減期が10分以上。
 
Type Aの反応は、反応が非常に速いので、混合撹拌部で反応が起こり、反応は混合プロセスでコントロールされる。マイクロリアクターを使った場合、流速、混合方式が反応に大きく影響する。

TypeBの反応は、混合の速さはそれほど重要ではない。混合部の後に滞留時間を稼ぐためのループを設けることが多い。ループの圧損が大きい場合は、混合部の後に、撹拌槽を設けて反応時間を稼ぐことにより、圧損を最小限にすることもある。

Type Cは、バッチ反応が適する。ただし、熱分解しやすい化合物や自己触媒反応などの場合、連続反応は反応の暴走を防ぐ効果がある。

Lonza社の見解によれば、マイクロリアクターに最もフィットする反応は、非常に反応速度の速いTypeAの反応だということです。この見解から考えるに、医薬原薬の製造工程の大半がマイクロリアクターに置き換わるということは現段階では考えづらいのではないかと思われます。TypeB, TypeCの反応の場合、連続反応にするメリット、マイクロ化するメリットは小さいからです。

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執筆者について

森川 安理

経歴 アンリ・コンサルティング 代表。
大学修士課程で有機化学を専攻後、1977年旭化成工業(株)入社。スクリーニング化合物の合成、プロセス化学研究に一貫して従事。この間薬学博士号取得。その後、医薬原薬の工場長を10年経験。工場長として、米国、イタリア、豪州、韓国の当局の査察および、制癌剤を中心にする治験薬の受託生産を経験。旭化成ファインケム(株)を2013年2月末退職。2013年3月より現職。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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