基礎からのGVP【第12回】

措置の決定

1.    概要
安全管理情報を収集・評価した結果に基づき、医薬品リスクを最小化し安全確保を如何に進めていくかを決定しなければならない。
GVPでは、「検討の結果、必要があると認めたときは、廃棄、回収、販売の停止、添付文書の改訂、医薬情報担当者・医療機器情報担当者・再生医療等製品情報担当者による医療関係者への情報提供又は法に基づく厚生労働大臣への報告、その他の安全確保措置を立案すること。」と安全確保措置案としてその手段を提示し、そして「安全確保措置案を適正に評価し、安全確保措置を決定するとともに、それらの記録を作成し、保存すること。」とされ、措置の最終決定は、総括製造販売後責任者の業務として「案を適正に評価し、決定する」ことのみ規定されている。このことから、情報の評価、措置の立案、決定は業務手順書にその手順を明確に規定し、製造販売業者として製品の安全確保のためにブレのない決定を下せる体制を構築する必要がある。

 
2.    措置の種類
この体制で最も重要なのは、措置の立案となるが、主な措置として図-1に示す対応がGVPで定められているが、措置の実施を含め医薬品リスク管理の検討するためには以下の対応区分が考えられる。

一般的なリスク最小化活動・安全性監視活動(措置)として
1)    今後同様の報告の収集に努め、監視を継続する。
2)    関連法規に基づき当該情報を行政当局へ報告する。
3)    安全管理情報につき積極的に情報提供し注意喚起する。
4)    使用上の注意、その他の添付文書の関連箇所を改訂し、注意喚起の強化を依頼する。
5)    お知らせ文書等を配布して、使用上の注意等が改訂されて新たに注意喚起しなければならない事項等を速やかに医療関係者に提供・伝達する。

特別なリスク最小化活動・安全性監視活動(措置)として
1)    緊急安全性情報・安全性速報を配布し、直ちに注意喚起の必要性につき医療関係者に伝達する。
2)    適正使用情報等の提供・配布、インタネット等の活用による伝達等による医療関係者や患者さんへの継続した注意喚起を促進する。
3)    特定使用成績調査又は製造販売後臨床試験を実施し、必要な情報の検出、検証する。
4)    用法・用量、効能・効果を変更する。
5)    使用を中断し、回収する。
6)    承認を取下げて、回収する。

個々のリスク最小化活動、安全性監視活動については、次号でその実施について述べることとするが、一般的な措置の1)~3)については、安全管理統括部門で日常的な業務として実施されていることである。3)については既知の副作用等の情報について、使用上の注意に記載され注意喚起されているものの、同様な副作用症例が継続して発現し、減少傾向が見えないときに実施される措置である。また、特別な措置の1),2)については、一般的な措置の一つとして区分することもあるが、情報提供の範囲が患者も含まれ、その社会的な影響の大きさから、特別な措置として、社内体制を整備すべきと考えられる

3.    措置の立案
様々な措置の中から、新たに収集した情報に基づきどのレベルの対応が必要かを選択しなければならない。一般的な企業では、情報の評価、措置の立案については、まず、製品担当者が担当し、業務手順書に規定している社内体制に従って最終的な評価の決定と措置が決定されることとなる。ここで重要なのが、如何に製品担当者レベルの評価・立案が適切にできているかである。残念なのは、最近、担当者が考える措置の立案は、「症例報告するのか、しないのか」にとどまり、総括的な安全対策としての評価・立案をほとんど意識していない傾向があることである。担当者は、新たに追加された情報に基づき、発症の要因を検討し、偶発的な副作用の発現か、関連する要因の範囲等を勘案し、製品の安全性プロファイルにどのような影響を与えるのかを慎重に検討する。そして、医療現場に何らかの追加情報を提供する必要があるのか、どのレベルでの安全対策が必要かをまず判断すべきである。その結果、症例報告基準に該当する情報については行政と情報を共有するための一つの手段として報告するのであって、立案ではなく情報の種類により自動的に決定されるものである。立案とは、新たな情報を医療現場に提供する必要があるのかないのか、あるのならどのような手段で、緊急性があるのかないのか等、そのレベルを選択することである。
 

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