業界雑感 【2021年11月】

2021/12/03 その他

出荷調整といった供給問題について。

 医療用医薬品の約2割、後発医薬品だけで見ると約3割の品目が欠品や出荷停止、出荷調整といった供給問題を抱えているとのことである。後発薬メーカーでの製造工程の問題で薬機法に基づいた行政処分が行われたことにより、それぞれの会社が製造販売している医薬品の供給がストップしたことがきっかけとなり、同一成分の代替医薬品にまで影響が及んでいるとのことなのだが、コロナウィルスの感染拡大による原材料をはじめとしたサプライチェーンの脆弱性の問題や、かつての石油危機の際のトイレットペーパーの品切れのように噂や風評による買い占めや買いだめなども現場レベルではあるのだろうと思う。
 9月に発出された医薬品産業ビジョン2021でも、後発医薬品の安定供給や医薬品流通の課題が提起され、経済安全保障の観点も合わせてサプライチェーンの強靭化に向けて取り組むとともに、安定供給責務の法的位置づけについての検討を行うとしている。医薬品は、通常使用期限が3年前後あり(もちろん一年未満という製品もあるが)、需要変動も大きくないので計画生産がしやすい。また嵩張らない高付加価値製品であることから輸送・保管のコストを含めても、先入れ先出しで管理されるので在庫リスクも小さい。その分、工場出荷から医療機関での使用までの品質をしっかり担保することが求められるし、安全在庫を常時確保し品切れしないようオペレーションしなければならないといったところがサプライチェーンマネジメントの特性といえる。生鮮食品や加工食品のように鮮度や賞味期限による廃棄ロスのリスクもほとんどなく、半導体など技術革新による製品の陳腐化が激しいわけでもない。強いてあげれば、薬機法に従って原材料も含めた製造・保管場所や製造方法、品質試験方法など承認された方法通りに許可された場所で製造・保管・試験をしなければならないのでリードタイムが長くなる傾向があること。品切れ等を起こさないためには増産のためにアクセルを踏み込んでも供給量が増えてくるにはある程度の時間がかかることを前提に生産計画を立て、原材料確保等も見込みで進めておかなければならないことくらいである。この一年ドミノ倒しのように続いている供給問題をできるだけ早期に解消することは喫緊の課題だが、原材料の国産化比率の向上や連続生産、RTRTの活用などリードタイム短縮につながる中長期的なリスク分散の取組にも期待するところである。
 

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執筆者について

村田 兼一

経歴 村田兼一コンサルティング株式会社代表取締役。
1978年藤沢薬品工業(現アステラス製薬)入社。注射剤製造、無菌バリデーション技術開発、FDA対応、基幹システム(SAP)開発等に従事後、生産本部にて中期戦略企画、工場分社化推進・合併準備委員会に携わる。合併後のアステラス製薬では、戦略企画の後、製造委受託の推進を担当する。
2012年に退社し、村田兼一コンサルティング株式会社設立。工場の原価をはじめとする計数マネジメントを中心に、SAP開発を含むサプライチェーン全般の管理・改善を専門とする。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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