欧米医薬関連法規と査察へのTTIP実施の影響

2016/07/21 製造(GMDP)

余 知暁

米国と欧州は2016年4月にTTIPに関する交渉を実施した。その結果を踏まえ、EUは5月24日にTTIPに関する資料-「EU PROPOSAL FOR AN ANNEX ON MEDICINAL PRODUCTS」を公開した。この提案から、今後の欧米医薬関連法規と査察におけるトレンドを考えたい。
 
まずは、TTIPとその背景について、簡単に紹介する。
 
1.TTIPとは何だろう?
TTIP、即ち「Transatlantic Trade and Investment Partnership」は日本語に訳すと、「大西洋横断貿易投資パートナーシップ協定(Wikipedia)」又は「EU米国の包括的貿易投資協定(JETRO)」と呼ばれている。本稿では「EU米国の包括的貿易投資協定」を採用する。この協定は、米国とEUの間で交渉中の自由貿易協定で、2013 年 7 月に交渉を開始した。欧米のGDPは世界全体のGDPの約1/2で、貿易額は世界全体の約1/3である。また、1日の平均貿易額は27億ドルで、互いの投資は3.7億ドルである。欧米の間で、共通認識を有し、TTIPを結ぶことより、世界最大級の自由貿易圏が作られる。その結果として、上述の通り世界全体の多数を占める欧米間の貿易の関税は無くなる。従い、TTIPの実施は世界貿易のルール、産業基準の変化をもたらすと言えるだろう。
 
医薬品産業において、欧米の市場は互いにオープンにし、全ての関税とその貿易障壁は撤廃されるようになる。同時に、多くの法規は標準化され、知的財産権の保護はより強化されるだろう。現在、TTIP交渉は13回実施され、2016年末あたりに発効されるようである。
 
なお、TTIPの発効に伴い、欧米の医薬産業に関する法規、EMAとFDAの査察にはどのような変化があるのだろうか?

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執筆者について

余 知暁

経歴 株式会社シーエムプラス中国リエゾンオフィス所長、GMP Platform コンサルタント。
2005年瀋陽薬科大学を卒業、同年日系大手エンジニアリング会社に入社。GMP部門のバリデーションエンジニアとして、日本において新設医薬製剤工場設立におけるバリデーション業務、DQ/IQ/OQ要領書の作成に従事。2010年上海東富龍科技股分有限公司入社。凍結乾燥機のエンジニアリング業務での通訳及び日中間における各種契約事項の調整に携わる。2013年株式会社シーエムプラスに入社。 PMDAによる中国製薬企業原薬工場GMP調査での通訳経験を複数回有し、中国語、日本語、英語と三ヶ国語を扱う。
2018年には中国CFDA(現NMPA)が主催する『日本のGMP査察システムに関する検討会』にメンバーとして参加。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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