高生産性を実現する工場計画の考え方-有機的工場設計論-
1. はじめに
あらゆる産業は基本的な原則を踏まえ、自由な競争の中で発展してゆく。競争に打ち勝つためには、その生産性が常に最大の課題となる。しかし20世紀終盤から21世紀にかけて、先進国における製造業の経済全体の中で占める割合は急速に下がってきている。アメリカ合衆国では既に経済の全体に占める割合は15%を切っており、農業と同じ道を辿りつつある。物に充足した先進地域では消費者のニーズが大きく変化し、機能的価値よりもそれ以外の付加価値に大きくシフトしている、当然その製品を生産する施設のあり方も、消費者のニーズに従って大きく変化せざるを得ない。
このような状況の中でこれからの工場、特に生産性の高い工場を計画するにはどのような考え方が必要なのか、いくつかの事例を紹介しながら述べたい。
2. 生産性に対する考え方の変化
高い生産性を実現するためには生産のイノベーションが必要である。イノベーションは技術の発展によって起こると一般的に考えられているが、実際には生産の概念の変革によって起こるのである。技術開発はその概念を実現するために行われてきたといったほうが正しい。時代の変化を感じ取った生産の概念の変革は、それまでとは違った製造のシステムを生み出す。そのシステムによる生産のイノベーションこそが経済を発展させる原動力となり、先進国の経済を形成してきたのである。
2.1 テーラーの科学的管理法
19世紀末、アメリカに大きく製造の概念を変えた理論が登場した。フレデリック・ウインスロー・テーラーが考案した「科学的管理法」である。それまでの製造は作る人、即ち熟練した一人の職人に任されていた。テーラーはこの作業を研究分析し、それらをいくつかの単純な技能に分解した。さらに、その単純化された技能を数ヶ月で習得できる訓練の方法を開発して、短期間でふつうの人を数人で一級の職人に仕立て上げた。これによって普通の人が製造に参加出来る様になり、アメリカ合衆国の製造業の生産能力と品質を大きく飛躍させた。
2.2 フォード生産方式のイノベーション
20世紀の初頭へンリー・フォードが流れ作業という考えを導入して、新しい生産方式を確立したフォード生産方式以前の自動車産業の車両の組み立ては、必要な部品を部品倉庫から必要に応じて、組立工場にて運んでくる、いわゆるセル生産方式であった。
しかし部品ストックを大量に必要とする自動車組立は、大きな部品倉庫を必要とし、そのため部品の選別と移動に多大な人力を必要とした。へンリー・フォードは組み立てのプロセスを分析し、組み立て順に必要な部品の倉庫を並べ、その中で組み立てる自動車を移動するという方法を考え出した。
ライン方式という、新しい生産概念の誕生である。これはテーラーの科学的管理法をさらに発展させ複雑な製品を単純な作業に分解し、大量生産に適用した非常に優れたシステムであった。
フォードの生産システムはその後の世界の工場のあり方に、最も大きくかつ決定的な影響を与えたこれは現在に至るまで多くの産業に採用されている画期的なシステムである。これらによってアメリカ合衆国は20世紀の前半で世界最大の工業国家、経済国家に成長した。
2.3 市場成長の時代
20世紀の経済発展の時代、製造工場の生産性とは、如何に多くの製品を短時間で製造することであった。それが製造コストを下げ、製造工場の利益につながると考えられていた。
従って、工場を計画することはこの考え方に沿って、製造設備を如何に効率よく動かすかが重要な事項で、建物などは最も安い単価で作られることが求められていた。製造設備が主役の工場が最も優れた生産施設であった。
戦後の日本の経済もこの生産システムの効率的適用によって大きく発展してきた。生産工場計画考える上で、生産量に限って考えればこの物理的生産性の高さは正しいといえる。特にものが不足している時代においては生産量こそ最大のテーマであった。そのためには効率的に管理された統制的な生産体制が必要とされた。それが時代の要求であった。しかし、製品の量が十分に市場に供給されると、消費者のニーズは機能的な価値から文化的な価値へ変化を始めた。
あらゆる産業は基本的な原則を踏まえ、自由な競争の中で発展してゆく。競争に打ち勝つためには、その生産性が常に最大の課題となる。しかし20世紀終盤から21世紀にかけて、先進国における製造業の経済全体の中で占める割合は急速に下がってきている。アメリカ合衆国では既に経済の全体に占める割合は15%を切っており、農業と同じ道を辿りつつある。物に充足した先進地域では消費者のニーズが大きく変化し、機能的価値よりもそれ以外の付加価値に大きくシフトしている、当然その製品を生産する施設のあり方も、消費者のニーズに従って大きく変化せざるを得ない。
このような状況の中でこれからの工場、特に生産性の高い工場を計画するにはどのような考え方が必要なのか、いくつかの事例を紹介しながら述べたい。
2. 生産性に対する考え方の変化
高い生産性を実現するためには生産のイノベーションが必要である。イノベーションは技術の発展によって起こると一般的に考えられているが、実際には生産の概念の変革によって起こるのである。技術開発はその概念を実現するために行われてきたといったほうが正しい。時代の変化を感じ取った生産の概念の変革は、それまでとは違った製造のシステムを生み出す。そのシステムによる生産のイノベーションこそが経済を発展させる原動力となり、先進国の経済を形成してきたのである。
2.1 テーラーの科学的管理法
19世紀末、アメリカに大きく製造の概念を変えた理論が登場した。フレデリック・ウインスロー・テーラーが考案した「科学的管理法」である。それまでの製造は作る人、即ち熟練した一人の職人に任されていた。テーラーはこの作業を研究分析し、それらをいくつかの単純な技能に分解した。さらに、その単純化された技能を数ヶ月で習得できる訓練の方法を開発して、短期間でふつうの人を数人で一級の職人に仕立て上げた。これによって普通の人が製造に参加出来る様になり、アメリカ合衆国の製造業の生産能力と品質を大きく飛躍させた。
2.2 フォード生産方式のイノベーション
20世紀の初頭へンリー・フォードが流れ作業という考えを導入して、新しい生産方式を確立したフォード生産方式以前の自動車産業の車両の組み立ては、必要な部品を部品倉庫から必要に応じて、組立工場にて運んでくる、いわゆるセル生産方式であった。
しかし部品ストックを大量に必要とする自動車組立は、大きな部品倉庫を必要とし、そのため部品の選別と移動に多大な人力を必要とした。へンリー・フォードは組み立てのプロセスを分析し、組み立て順に必要な部品の倉庫を並べ、その中で組み立てる自動車を移動するという方法を考え出した。
ライン方式という、新しい生産概念の誕生である。これはテーラーの科学的管理法をさらに発展させ複雑な製品を単純な作業に分解し、大量生産に適用した非常に優れたシステムであった。
フォードの生産システムはその後の世界の工場のあり方に、最も大きくかつ決定的な影響を与えたこれは現在に至るまで多くの産業に採用されている画期的なシステムである。これらによってアメリカ合衆国は20世紀の前半で世界最大の工業国家、経済国家に成長した。
2.3 市場成長の時代
20世紀の経済発展の時代、製造工場の生産性とは、如何に多くの製品を短時間で製造することであった。それが製造コストを下げ、製造工場の利益につながると考えられていた。
従って、工場を計画することはこの考え方に沿って、製造設備を如何に効率よく動かすかが重要な事項で、建物などは最も安い単価で作られることが求められていた。製造設備が主役の工場が最も優れた生産施設であった。
戦後の日本の経済もこの生産システムの効率的適用によって大きく発展してきた。生産工場計画考える上で、生産量に限って考えればこの物理的生産性の高さは正しいといえる。特にものが不足している時代においては生産量こそ最大のテーマであった。そのためには効率的に管理された統制的な生産体制が必要とされた。それが時代の要求であった。しかし、製品の量が十分に市場に供給されると、消費者のニーズは機能的な価値から文化的な価値へ変化を始めた。
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