医薬品開発における非臨床試験から一言【第17回】

医薬品の非臨床薬物動態試験における体内分布試験の意義を考えてみますと、被験薬を投与して吸収、分布、代謝、排泄についての解析は、有効性とその持続性ならびに作用機序等を推定するのに必要です。動物試験では、体内分布により濃度と持続性を明らかにすると、毒性(副作用)発現を考察するための情報も得ることができます。また、体内分布の情報は、臨床試験で得られる血中濃度と有効性/副作用を橋渡しでき、安全で安心な医薬品を届けることに寄与しています。

薬物動態試験では、投与された薬物の吸収(Absorption)、分布(Distribution)、代謝(Metabolism)、排泄(Excretion)を総称して、ADME(アドメ)とよび、これらの濃度と速度を薬物動態(PK;pharmacokinetics)とよびます。この中で、薬物の分布は、非臨床薬物動態試験ガイドラインに従い、単回投与により、薬物の各種臓器および組織への分布と、経時的変化、蓄積性を明確にします。体内分布試験のタイミングについては、日本で臨床開発を開始する場合、比較的早期に実験される傾向があり、海外ではもう少し遅くなるように思います。

体内分布試験の項目としては、臓器内および組織内濃度に加えて、胎盤・胎児移行性、血漿中の蛋白結合、血球への分配を含みます。今回は、臓器・組織への分布試験について、ラットに放射性物質を投与した後に、経時的に解剖し、放射能濃度を測定する方法(組織摘出法)について解説します。

げっ歯類を用いた試験では、正常ラットの雄、7週齢程度を使用し、1夜絶食の後に、臨床と同じ用法用量で被験薬の放射性標識体を投与します。例えば、14C-標識体を用いて経口投与します。この場合の投与量は、血中濃度試験の「線形領域」で決定します。この結果を基本に、雌雄の比較、食餌の影響、週齢の違い(幼若、老齢)、さらには同じげっ歯類のマウス、非げっ歯類(イヌ、サル)の試験など必要に応じて実施します。また、薬理作用との関連で、病態モデル動物での検討も考慮します。

実験の概略について、血中濃度試験での被験薬の消失の特性を考慮して、投与後の解剖時点を決めます。例えば、投与後1、6、24、48、72時間時点などにします。また、1時点に3~5例程度を配置すれば平均値と標準偏差が求められます。投与後の所定の時間になりますと、エチルエーテルなどで深麻酔し、腹部を切開して下大静脈からヘパリンを用いて全採血を行います。採血後には脱血を行いつつ、大静脈から、冷却した生理食塩液を注入して全身を還流します。

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