医薬品開発における非臨床試験から一言【第14回】

新型コロナウィルスの治療薬とワクチンの開発状況を見ますと、治療薬については、感染初期にウィルスの増殖を抑える「抗ウィルス薬」が必要であり、重症化してくると、サイトカインストームや急性の呼吸不全を改善する薬剤が重要と思われます。そして予防にはワクチン開発が必須となり、多くの候補が前臨床と臨床でしのぎをけずっています。

ワクチンの効果と副反応の評価が大規模臨床試験から出てきました。アメリカのファイザーとドイツのビオンテックが開発したmRNAワクチンは、4万人余りを対象にP3試験を行い95%の予防効果があると報告されました。一方、アメリカのモデルナもmRNAワクチンを開発し、3万人以上を対象にP3試験を行い、94%の有効性を示しました。前者が緊急承認されたイギリスでは2020年12月8日に投与が開始されました。アメリカのFDAでも独自の解析も加わり、緊急承認になり、さらに詳細な情報が提供されました。

これらのmRNAワクチンはコロナウィルスを形成するmRNAをターゲットにして、構造改変して使用しており、非臨床的には毒性(副反応、Off-target)を抑えて、核酸分解酵素(RNAase)の作用を受けにくくし、体内保留性を高めるために筋肉注射で投与します。現時点で開発の詳細を知ることは難しいのですが、これらのmRNAワクチンは、これから紹介します核酸医薬の開発と同様な範疇に含まれます。

核酸医薬品にはアンチセンス核酸、アプタマー、RNA干渉(RNAi)核酸が含まれ、抗体医薬品に並んで次世代の分子標的薬として注目されています。核酸医薬品は、ヌクレオチドを基本骨格としたオリゴマーである点で、アミノ酸から成るペプチド・タンパク製剤を包含するバイオ医薬品および従来の低分子化学合成医薬品とは異なっています。

作用様式に関してもアプタマーは酵素などのタンパク質標的分子に直接結合してその作用を抑制するという点で抗体医薬品に類似しています。しかし、アンチセンス核酸やRNAi核酸は、細胞内に取り込まれてから、細胞が持っているメカニズムを利用して細胞質内の核酸に直接作用する点で、作用機序がバイオ医薬品や低分子化学合成医薬品とも異なります。したがって、このような分子構造上の違いや作用機序の違いから新たな安全性の課題があり、対応が必要となります。

バイオ医薬品の非臨床安全性評価については、2012年のICH-S6ガイドライン「バイオテクノロジー応用医薬品の非臨床における安全性評価」が運用されています。この指針には適用範囲の中で「オリゴヌクレオチド製剤にも適用されうる。」と記載されていますが、具体的なオリゴヌクレオチド製剤を念頭においたものではないと考えられます。

実際に核酸医薬品(オリゴヌクレオチド製剤)が開発され始めたのはICH-S6ガイドラインの公表以降であり、さらには冒頭に示しましたmRNAワクチンのように、このガイドラインで想定していた既成概念の枠を越えて、分子構造的にも作用様式の面でも新規性の高い医薬品が現れてきています。したがって、ICH-S6ガイドラインや低分子化学合成医薬品の安全性評価のために作成された一連のICH-Safetyガイドラインを核酸医薬品の非臨床安全性試験にそのまま適用することには限界があります。上述したように核酸医薬品の薬理作用上のカテゴリーだけではなく、分子構造上、核酸医薬品としての本体が天然型のみのオリゴヌクレオチドなのか、天然には存在しない化学修飾されたオリゴヌクレオチド型を含むのかによってその対処法も異なってきます。

ここでは核酸医薬品の特性を考慮し、また開発が先行していますアンチセンス核酸での事例を参考にして、非臨床安全性評価について述べ、さらに薬物動態試験、一般毒性試験/安全性薬理試験および特殊毒性試験について考えてみたいと考えています。

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