エッセイ:エイジング話【第11回】

プラスチックとステンレス ~超純水と分析技術の向上~

 精製水(PW)の製造には多くのプラスチックが係わってきました。イオン交換樹脂・精密ろ過膜(MF)・逆浸透膜(RO)・限外ろ過膜(UF)などです。
PW : Purified water, M F: Micro filter
 一方で、注射用水(WFI)の製造にはステンレスからできた蒸留器が最終装置でした。ステンレスはさびないこと、耐食性があることから経年劣化しないイメージがあり、注射剤を調液するタンク・バイアルに充填する機械にも使われます。
 特に医薬品製造器具は、熱水殺菌や蒸気滅菌できる材質であることが好感されてきました。半導体製造分野には超純水(UPW)がありますが、この製造機器として蒸留器は使われません。
UPW : Ultra pure water
 蒸留器は海水淡水化装置として使われましたが、この飲料水レベルの用途では、WFIほどには、蒸留工程中に微量な異物が混入しても問題となることはありません。
 UPW中には、微量であっても異物が装置内から溶出することは避けなければならないのです。UPW製造の初期の段階で用途から含まれてはならない金属イオンと微粒子が残留していることが判りました。
 この調査が結果を出したのは、水質分析技術の向上があったからです。この取り組みはトライアンドエラーの連続だったのです。
 既存の機器分析装置を使って水質検査するには、サンプルを濃縮することから始まりました。サンプルを1000倍に濃縮すれば、ppmオーダーの測定限界から、いっきにppbオーダーの測定限界まで可能になると考えられました。
ppm : 10のマイナス6乗, ppb : 10のマイナス9乗
 ところが、1000mLのサンプルを1.0mLまで濃縮することは、並大抵ではありませんでした。濃縮工程中にサンプルが汚染を受けてしまうのです。
ここから、純水とUPWとの水質区分が明確になりました。純水メーカは晴天の霹靂(へきれき)というか、これまで純水(=H2O) だと称していた水の不純物を、厳密に検査しなければならなくなったのです。 

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