医薬原薬の製造【第11回】

抽出溶媒の選択

抽出には必ず溶媒が用いられますが、この溶媒がどのようにして選択されるのかについて考察します。溶媒の性質をまとめた表を最後のページに提示致します。一番右側の欄にはLogPが表示されています。この数値は、オクタノール/水系で、それぞれの溶媒の分配係数Pの10を底とする対数を表します。大きいほど脂溶性が高く、ゼロ以下の溶媒は水と混ざりあいます。

抽出溶媒としては、水と分離するものであることが必要です。また分離した有機層にできるだけ水分が少ないものが望ましいです。抽出溶媒として用いられているものは、LogPが1以上のものがほとんどです。酢酸エチルが0.73と1を切っていますがこれは例外と言えます。

ヘキサン、トルエンのような炭化水素系溶媒は、LogPが2.5以上で、比較的極性の低い化合物の抽出に用いられます。水と共沸しますので、水分を除くことは容易です。

塩素系の溶媒は、有機層に含まれる水分が少なく、比較的極性の高い化合物も良く溶解するので抽出溶媒としては非常に優れています。しかしながら、前回述べましたように環境面から種々の規制があることで、最近ではほとんど使われなくなってきています。よほどのことがない限り抽出溶媒として選択されることはありません。

エステル系溶媒では、酢酸エチルが最も良く用いられています。工業的に大量に使われているために価格が安いというのがその理由と考えられます。しかしながら、酢酸エチルは、酸処理、アルカリ処理(特にアルカリ)によって、部分的に加水分解を受け、エタノール、酢酸を生じ、微量ではありますがこれらが抽出物に混入します。これが製造現場ではやっかいな問題を引き起こすことがあります。酢酸は、沸点が高いため、溶媒を除去して生成物を得るときに、生成物に混入してきます。またエタノールは、酢酸エチルと沸点が近いので、回収時に分離することができないので、回収を続けて行くとエタノール含有量が徐々に増えてきます。このような理由から、酢酸エチルは好んで使いたい溶媒ではありません。これを避けるために、最近では酢酸イソプロピルが抽出溶媒として用いられることが増えているようです。ただし、この溶媒は酢酸エチルに比べて、流通量が少ないのでコストが高くなります。
 

執筆者について

経歴 ※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

連載記事

コメント

コメント

投稿者名必須

投稿者名を入力してください

コメント必須

コメントを入力してください

セミナー

eラーニング

書籍

CM Plusサービス一覧

※CM Plusホームページにリンクされます

関連サイト

※関連サイトにリンクされます