細胞加工施設運営における『経年劣化・老朽化』への対応【第4回】

 臨床用にであれ研究用にであれ、ヒト細胞の調製、加工、製造を実際に行うには「細胞加工施設」と呼ばれるハードウエアが必要である。細胞加工施設は一般にCPC(Cell processing center)やCPF(Cell processing Facility)とも呼ばれており、再生医療分野での取り組みを行う上では、必須の施設だ。本稿では以下、CPFの略称を使用する。
 昨今、大型建造もあちこちで見られるCPFについて、本稿では長期使用時の経年劣化や老朽化の兆候、それら現象への対応、管理法など実務的な側面を6回に分けて論じていく。4回目となる今回は、CPFユーザーにとって馴染み深い監視盤や計装関連のトラブルから、施設のリスク分散の方法について考察したい。

▽計装トラブルはここが「嫌」
 これまでも経年劣化による不具合や異常をいくつかピックアップしてきたが、その中でも非常に「嫌」なのが、計装関連のトラブルだ。監視盤に表示される室温がおかしい、作業者が出入りしているにも拘わらず室圧の表示が動かない、管理数値が上振れしてしまって戻らない、などは施設管理者にとってなじみある事象だと思われる(ちなみにかなり劣化した盤では、室温が摂氏60度といった寝言ばりの表示をすることもたまにある)。
 そして、この現象のなにが「嫌」かといえば、故障個所がすぐには測りがたいこと、そして影響範囲が大きいことにある。上記の室温の例でいえば、環境が本当におかしいのか、実数値をとっているセンサーがおかしいのか、制御がおかしいのか、計器がおかしいのか表示がおかしいのかは、詳しく調べてみなければわからない。また、昨今の計装は大掛かりな統合システムに組み込まれて管理されているケースもあるため、システムや通信上の要素も排除できない。さらには「センサーがおかしい」と分かったら分かったで、実際の室温はコントロールできなくなっていたことになるのだ。
 もしこれが苦でも嫌でもないというなら、その人はCPFの管理には不向きである。ものすごく嫌なはずだ。だって、そのコントールできていなかった「真の数値」はこの時取れていないわけであるから、異常がいつから、という調査さえおぼつかない。製造に影響した範囲がわからないわけだ。正しく聞けるのは、作業者の「なんとなく暑いと思ってました!」「そういえば寒い気がしました!」といった所感くらいという、管理の根幹を崩してくるのが計装関連トラブルなのである(話はそれるが、およそ室温・室圧に関連する異常は、こういった作業者の体感がもっとも敏感なので、作業者の訴えがあった場合、管理者は迷わず調査するべきである)。
 もちろんこのような事情のため、施設バリデーション時に計装点検はかなり気を使って行われる。にも関わらず、だんだんと老朽化してくるにつれ、トラブルが生じやすいのもまた、計装関連だ。壊れているならまだいいのだが、一度狂いだしてしまうといくら調整しても微妙に不調、ということも生じてくる。結局のところ経年劣化というのは、このように「丸ごと」交換することが困難なものに色濃く出てくるのだ。

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