製薬メーカーにおけるコア人財の育成【第13回(最終回)】

製薬メーカーにおけるコア人財の育成
【第13回(最終回)】
 2. 多様性のマネジメント 「多様化こそ企業発展の原動力」
  2.5 メンタルヘルス対応
 おわりに
 

 前回までは、「グローバル化対応」について考えてみた。今回は、「メンタルヘルス対応」について考えてみることにする。
 仕事や職場に関する強い不安や悩み、ストレスを抱える人は増加傾向にあり、心の不調による休職や離職も増加している。働く人たちがその持てる能力を発揮し、仕事や職場で活躍するためには、心の健康管理(メンタルヘルス・マネジメント)への取り組みが個人にとっても組織にとっても一層重要になってきた。
 心の健康管理には、一人ひとりが自らの役割を理解し、ストレスやその原因となる課題に対処していくことが大切である。また、雇用する企業としても、社会的責任の履行、人的資源の活性化、労働生産性の維持・向上を図るうえで、社員のメンタルヘルスケアについて組織的かつ計画的に取り組む必要がある。
 今回は、研究開発職、とくに研究所に勤務する社員のメンタルヘルスを中心に考えてみることにする。もちろん、他の職種の社員にもほとんどの事項が適用可能である。
 

2.5 メンタルヘルス対応

 研究所や研究現場におけるストレス負荷の増加、モチベーション低下の原因はどこにあるのだろうか。研究部門は、専門分野が細分化されており、ともすれば狭い範囲の限られた仲間同士の付き合いになりがちである。もちろん、四六時中同じ仲間との接触にはプラスとマイナスの両面があるが、マイナス面を避ける方策の一つとしては、学際ルームなどを設置することにより環境を整え、ダイバーシティに配慮した様々な人との触れ合いも必要であろう。
 医薬品の研究開発の場合には、成功確率が極めて低く、成功と失敗が明確である。したがって、とくに若手研究員の場合には、成果のみの人事評価ではなくプロセスにも配慮した人事評価が必要となる。さらに、成功事例や失敗事例を共有することを目的に、定期的なセミナーを開催することも有効な対応策となる。このセミナーでは、失敗の犯人捜しをするのではなく、成功あるいは失敗に至るプロセスを共に学び知的財産として共有化することを第一の目的とするのである。

 それでは、メンタル疾患の疑い、兆候のある研究者・技術者の変化はどのようなところから感じられるのだろうか。

・勤怠状況の変化:遅刻・早退・欠勤が増える、無断欠勤がある、残業・休日出勤が増える

・行動や様子の変化:表情や動作に元気がなくなる、不自然な言動・ミス・事故が目立つ、服装が乱れたり不潔になったりする

・業務パフォーマンスの変化:仕事の効率が悪くなる、業務成果がなかなか出てこない、報告・連絡・相談・職場での会話が減る
 

 上記の変化が認められたら、声掛けをすることが大切である。メンバーのいつもと違う変化に気づき、声を掛けて話を聴き、産業医などの健康管理スタッフに繋ぐことが重要である。
 最近は、感情の起伏が激しくなり、普段では考えられないような暴言を吐く、同僚や顧客とトラブルを起こす、といった従来のうつ症状とは異なる新型うつ病(現代型うつ病)のようなメンタル疾患も増えている。この種の新しいタイプのうつ病に共通してみられるのは、役割意識に乏しく、他責的・他罰的で、薬物が効き難く、遷延化するという特徴がある。このような新型うつ病によっても一部を除き上記の変化が認められる。このようにいつもと違う変化が認められたら、同様に声掛けをすることが大切である。

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