業界雑感 2018年8月

 協和発酵キリンの腎性貧血治療薬「ネスプ」(ダルベポエチンアルファ)のオーソライズドジェネリック(AG)が承認された。承認を取得したのは同社の子会社である協和キリンフロンティアで、ネスプのAGの製造販売承認を取得するために設立された会社である。このAGが、12月の薬価収載でバイオシミラーとして先発品の0.7倍の薬価となるのか、後発品としての薬価扱いで0.5倍となるのかが注目されているという。
 バイオ医薬品は、その分子構造の複雑さから低分子医薬品のように先発品との「同一性」を示すことは困難なため、先発品との「同等性・同質性」を示せば、バイオシミラー(バイオ後続品)として承認される。今回承認されたネスプのAGは、先発品と原薬や添加物、製造方法が全く同じものという前提になるので、類似品であるバイオシミラーとも区別して「バイオセイム」とも呼ばれる。ということで、今まで使っていた医薬品のライフサイクル別分類に、新しくバイオAG(バイオセイム)が加わることになる。
 
先発品 特許により守られ権利を持つ会社のみが販売できる医薬品。バイオ医薬品も含まれる
長期収載品 先発品としての特許が切れ、後発品の発売が可能となった医薬品
エスタブリッシュト
医薬品
有効性、安全性、使用法が確立され、長きにわたり医療に貢献している医薬品で、先発メーカーがジェネリックとして開発し販売する場合の呼称
オーソライズド
ジェネリック
(AG)
先発薬メーカーから特許権の許諾を受け後発薬より一足先に発売、市場の独占を狙う医薬品。
先発品と同一の原薬・添加物・製造方法で製造されているが、薬価算定上は後発医薬品として算定される
ブランドジェネリック 先発メーカーから承継を受けたジェネリックメーカーが先発薬として販売する長期収載医薬品
後発品
(ジェネリック)
先発品の特許切れにともなって後発品メーカーが独自に開発し販売する医薬品
バイオ後続品
(バイオシミラー)
先行バイオ医薬品と同等/同質の品質、安全性及び有効性を有する医薬品
バイオAG
(バイオセイム)
先発品のバイオ医薬品と同一の原薬・添加物・製造方法で製造されている。薬価算定上後発医薬品として算定されるのかバイオ後続品として算定されるのか注目されている

 AGが初めて承認された2013,4年の頃、これは今後のジェネリック業界を中心とした薬業界の台風の目になるとの予感があったのが、いよいよ現実になってきた。現行薬事制度の中では一物二名称は認められないので、先発メーカーがAGを発売しようとする場合は別の会社で承認申請を行うことになる。子会社、グループ会社、関係会社といったところがこれまでAGを発売してきており、協和キリンフロンティアもAGを発売するために作った子会社といえる。単純計算で先発品の8割が特許切れに伴い後発品に置き換わるとしても、その後発品の5割のシェアをAGで取れれば、特許切れ前の6割のシェアは確保できるわけで、生産量が80%減少と40%減少では安定供給や原価維持の観点から天と地の違いがある。「先発メーカーが特許切れを前に子会社でAGを発売する。」というビジネスモデルが今後定着していくのだろう。
 AGが後発品市場で存在感を増してくれば、従来の後発品ビジネスは苦しくなる。特にバイオシミラーには臨床試験が必要だったりして低分子の後発品にくらべ多額の開発投資が必要なので、今回のようにバイオセイムがAGとして発売されてしまうと、開発投資の回収すら危うくなることも考えられる。バイオシミラーの開発を進めている企業にとっては脅威以外のなにものでもなく、事業化の是非も含めた大きな方針転換を強いることになりはしないか、ネスプAGの12月薬価収載に向けて厚労省のかじ取りに注目である。
以上

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