国内外規制当局査察対応【第2回】

2014/07/04 品質システム

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【第2回】最新のFDA査察対応(2)査察官による査察方法と対応準備

2.2 FDA査察官による査察方法(第1回連載の続き)
 査察の重点項目の主なものを以下に示すが、FDA査察のあり方が2002年のFDA査察マニュアルの発行により、従来の個別事象の指摘からシステムを査察する方法へ変更され、海外の医薬品業者に対してもこれが適用されるようになった。
 ある品目のFDA査察で、例えば品質システムに問題ありとされた場合、当該工場の全ての米国向け輸出製造品目が出荷できなくなってしまう。また、開発中の品目の承認期間の延長になるのみならず、大きな企業イメージの失墜を招くことになる。FDAは自国の消費者の健康保護を最優先する立場から、FDA査察を行うことになる。
 
 別紙2(第1回連載)で規定されるFDA査察における重点項目を、以下のa.~f.に示した。
 

a.FDAは、提出済みNDA、DMFや過去のEIR(Establishment Inspection Report)の内容を事前に評価し、特に注目すべき点を事前調査する。

b.査察時には、全ての点において、逸脱・異常・事故、変更管理、洗浄バリデーションを含むバリデーション関係に特に重点が置かれる。SOPに不備がないか、またドキュメント化がなされているかが、ポイントになる。既存品の場合は、苦情に係る内容も確認される。

c.Plant Tourによる製造操作等の観察、検証が行われ、また製造記録等も確認され、逸脱事項の有無を確認されるため、工場内の入念な整理整頓とドキュメント類の精査・整備が必要である。多品目製造施設では、汚れ(交叉汚染防止)対策、洗浄、施設・配管の表示等にも注意する。

d.電子署名/電子記録(又は電磁的記録)を採用し、21 CFR Part11対象として対応が必要と判断されたコンピュータシステム、機器に対しては、必要となる要件を満たすために、手順等を作成し運用しておく必要がある。

e.各分野のシステムに対する査察対応については別紙3を参照のこと。特に品質システムは必ず査察される。

f.ICHQ7原薬GMPガイドラインに示されるように、重要な装置及び付帯設備の適格性評価(DQ, IQ, OQ, PQ)が完了し、関連書類が整備されていることを確認しておくこと。

 
(注)
 ランバクシーは米国で当局の厳しい措置に直面している。FDAによって同社は5億ドルの罰金とインドの多くの工場の事実上の操業停止を命じられた。今年行われたFDAの査察では、インド北部のパンジャブ州トアンサにある薬品成分工場からの対米輸出が禁止され、同社は一部成分を外部に頼らなければならなくなった。
 FDAの1月の報告Form483によると、トアンサ工場の従業員は原料と有効成分がFDA基準に合致しない時には試験結果に手を加え合致したように見せかけていたという。FDA当局者は、従業員は基準に合致しない場合は「受容可能な結果が出るまで」材料を再試験し、不成功の試験の証拠は廃棄していたことが分かったと述べた。
 査察官らによると、同工場の研究所は「ひどく荒廃」しており、窓は閉まらず、ある部屋には「数え切れないほどの」ハエがいたという。
 
出典:
1)「第一三共の手に余ったランバクシーの根深い品質問題」:http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702304364704579488462546047446.html 
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執筆者について

高平 正行

経歴 エイドファーマ 代表
NPO-QAセンター 理事 事務局長
1979年塩野義製薬(株)入社。製薬プラントの立上げ、医薬品製造管理者、合成研究等の製造業務を経て、品質保証部へ転出。信頼性保証本部 品質保証部 次長として、GMP統括管理、GQP品質保証業務(出荷判定、逸脱・品質不良、変更管理、苦情・回収)、国内外にある自社製品関連170箇所製造所のGQP/GMP/QMS/CMCの信頼性保証、医薬品・診断薬・医療機器製造所のGQP/GMP/QMS適合性監査などを約10年間統括する。また、医薬品医療機器総合機構一変・軽微変更、製品管理業務、国内外の医薬品品質保証ガイドライン等のカスタマイズ化にも従事する。
2011年12月より(株)エースジャパン 取締役 製品戦略担当。医薬品の原薬、中間体を中心とした品質保証、製造・試験、製造販売管理全般にわたり経営の視点から携わる。
2016年6月より現職。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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