続・医薬生産経営論 (現場のLow-Cost Operation)【最終回】

この論文のテーマは、サブタイトルにあるように、現場のLow-Cost Operationの提言である。しかし、今日の日本の製造業では、Low-Cost Operationよりも、最優先すべき喫緊の経営課題が存在する。
 
最優先すべきは「安全・コンプライアンス・品質」である。
このことは、製造業においては至極、当然のことではあるが、日本では往々にして忘れがちになる。特に、生命に関連する医薬品企業においては、このことを絶対に忘れてはならない。
昨年(2013年)後半から今年の初めにかけて、日本の製造業では、日本人の誰もが信じられないような、そして、絶対に忘れてはならない事件が起きた。
阪急阪神ホテルズに代表される有名ホテル・レストランでの食材偽装事件であり、マルハニチロ(旧アクリフーズ)群馬工場での冷凍食品への殺虫剤混入事件である。
製造業ではないが、JR北海道の一連の事故・事件も、日本の企業として、その教訓と反省を忘れてはならない。日本の製造業や鉄道事業の信頼を大きく毀損させたこれらの事故・事件を、あらゆる日本企業は「対岸の火事」にしてはならないし、すべての企業が自らの管理制度から文化に至るまでを、徹底的に再点検すべきなのである。すなわち、「安全・コンプライアンス・品質」が何よりも最優先されているかどうか、再点検すべきなのである。
おそらく、マルハニチロや阪急阪神ホテルズやJR北海道と同じ病巣が、多くの日本企業を、その体内深く密かに侵しているのではないだろうか。
 
「安全・コンプライアンス・品質」が最優先されているからこそ、日本製品が「安全・安心」であるとして、つまり、価格だけでなく製品力を構成する要素を総合した「価値」において、日本の製造業の競争力が成り立っているのである。この最優先すべきことを忘れてしまったら、競争力を捨ててしまうことと同じことなのであり、日本が日本でなくなる、ということなのである。「安全・コンプライアンス・品質」を確立し、さらに強固にするためには、必要なコストの増分を妨げるべきではない。生命関連産業と言われる医薬品企業にあっては、特に、この経営課題が何よりも最優先され、何よりも最重要とされなければならない。医薬品企業においては、市場戦略や販売戦略などの如何なる戦略も、「安全・コンプライアンス・品質」の前では、頭を垂れて道を先に譲らなければならない。なぜなら、売上げ・利益の減少よりも、「安全・コンプライアンス・品質」の方が企業の破綻へ、短期間かつ激動的に直結するからである。
この論文のテーマとは全く逆行するようであるが、最終回として、この重要かつ喫緊の経営課題に触れない訳にはいかない。
 
「安全・コンプライアンス・品質」を最優先するということは、端的に言えば、社会やお客様からの信頼を大切にするということに尽きる。
甚大な事故・災害、コンプライアンス逸脱・違反、製品品質の重大な異常・欠陥は必ず、その企業が順調に成長中であっても、高い利益率を確保していても、その企業を衰退させ破綻に導く。少なくとも、歴史的事実として、企業がひとたび社会やお客様から失った信頼を取り戻すことは極めて困難なのである。他方で、これも歴史的事実として、「安全・コンプライアンス・品質」は時として忘れられがちであるし、目先のコスト低減や利益確保のため後送りされることが多い。

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