再生医療等製品の品質確保のための要求事項【第7回】

 ここでは、再生医療等製品の最終製品における最終製品の考え方と、それにともなう製造方法のバリエーションについて概説します。今回のお話しは、少し現状とはかけ離れた、将来展望を含む内容となりますが、細胞製造における品質確保(プロセス)を検討するうえで、患者の(投与手技を含む)治療のために必要な、アウトプット(製品形態)とインプット(原料細胞)を考慮することは、重要であると考えています。
 
●再生医療等製品製造のスケールアップとスケールアウトの必要性
 製造のプロセスは、最終製品の規格(アウトプット)、すなわち内含する分化細胞の組成と数量や形態、および、原料の規格(インプット)から決定されます。再生医療等製品の製造プロセスは、原料となる細胞の選択と、最終製品をどのような形態で患者(医療機関)へ供給するかによって、図1に示すような、12種類程度のバリエーションが想定されると考えています。

 



図1.再生医療等製品で考えられる製品形態のバリエーション
 

 一般的に、最終製品が凍結等の長期保存が可能な方法で、原料が患者由来ではない同種由来(他家)細胞ならば、製品はロットを形成することが想定されます。これらは、1回の製造でできる限り多くの製品が調製可能な、スケールアップ型の製造が要求されると考えます。これに対し、自己細胞由来の製品では、製品はロットを形成しない一品もの(テーラーメイド)製造であり、スケールアウト型の製造であることが想定されます。これらの考え方は、現状の、患者の治癒力を高めること(可逆的な回復)を目的とした、10億個スケール未満の細胞(懸濁液)を投与する治療には、当てはまる場合が多いと考えます。
 一方で、再生医療が、将来的に期待される、患者の不可逆的に失われた機能を回復する目的で適用されるには、最終製品(移植物)における要求の1つに、「機能」という有効性が付加されていくことが予想されます。機能を有する最終製品の形態としては、例えば、培養組織のような構造物が挙げられます。培養組織を最終製品とする場合、長期的な保存方法が確立されなければ、使用期限(投与可能な期間)は比較的短いと考えます。そのとき、組織への調製は治療時における用事対応となり、製造後すぐに医療機関へと運ばれ、速やかに患者への投与が行われる必要が生じます。したがって、テーラーメイド治療のための、スケールアウト型製造の考え方は、今後においては、マスターセルバンクを有するiPS/ES細胞由来製品でも、十分に可能性があると考えます。

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