医薬品製造現場におけるオートクレーブのPQの進め方(1)

 オートクレーブによる高圧蒸気滅菌法は、医療現場、医薬品製造などにおける主要な器具滅菌法の1つであり、バリデーションの考え方も一般化されつつある。しかしながら、PQ段階では機器の運用方法やスケール、滅菌物量など、バリデーションを行うそれぞれの現場において状況が異なり、それに応じて実施方法を変えていく必要がある。そして、いざバリデーションを計画する段階になると、全てを理想どおりに実施するためには膨大なマンパワーと時間が必要であることに気づき、限られたリソースの中でしっかりとした理論構築をするために、多くの担当者が頭を悩ましていることが現実であろう。本稿では、現場担当者の一助となるべく、オートクレーブのPQ実施における計画の立て方、進め方について、一例を紹介する。
 
1.滅菌物リストの作成
 全ての始まりは、バリデーション対象となるオートクレーブで何を滅菌するのか、その滅菌対象物の種類と数量を把握することからである。既設の設備に関して再バリデーションを実施する場合や既設設備の更新をする場合は、これまで運転してきた実績からリストを作成する。新規設備の場合は試運転結果などから想定してリストを作成するが、汎用品でない特殊器具の抜け落ちがないことを特に注意したい。この段階で最低限ピックアップする項目は、①滅菌物の種類、であり、同時に選定した滅菌物の、②1回の滅菌における最大積載量、③材質、④梱包形態である。
 
①滅菌物の種類
 出来る限り細かく分類することが好ましい。同じステンレスタンクであっても、流入口の数やベントフィルターのサイズが違うのであれば別器具として記載すべきであるし、ピンセットなどの小さな器具であっても梱包形態が異なるのであれば別器具とすべきである。フレキシブルチューブやスレンレス配管などは種類が多くなりがちであるが、長さ、内径が異なるのであれば別物としてリストしたい。最低限、内径の種類毎に最も長いものを1種類ずつピックアップする。最も長いものを選択するのは、言うまでも無く通蒸条件がワーストになるからである。
 
 "滅菌物が多いとバリデーションが大変"という意識が働き、この段階でリスト化する滅菌物を選別しがちであるが、それは間違いである。バリデーション時の作業負荷を減らす作業は、後述するグルーピングなどの中で行うべきであり、滅菌物リストに抜けがあってはならない。
 
②1回の滅菌における最大積載量
 積載パターンによって大きく数量が異なる場合もあるが、この段階では過去実績から最も多い量を記載する。新規設備で数量が想定値である場合は、安全マージンを見込んで多めに記載する必要があるが、積載パターン決定の際にワーストケースを想定して多めに積載するため、過剰なマージンを見込む必要はない。
 
③材質
 ガラス、金属類、プラスチック、その他、などに分類する。複数材質が混在している場合は、その他に分類する。
 
④梱包形態
 滅菌バックなどを用いることも多いと思うが、パッキングした器具をそのままオートクレーブに積載する場合と、通蒸性のある金属容器などにいれた後に積載する場合は、別形態として分類すべきである。また、クリーンルームへの持込を意識し、2重・3重に梱包している場合も当然別形態としてリストアップする。

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