医薬品の外観目視検査における要求品質の明確化のために【第35回:最終回】

~外観検査に関するQ&A集(パート2)~


1.外観検査に関するQ&A集(パート2):前回からの継続
 これまで、外観検査に関するセミナーを多数担当しており、受講者から多くの質問を頂いている。それらをQ&Aとして、以下にまとめたので参考にしてほしい。いずれも複数回質問を頂いたものであり、多くの方の職場においても参考になる事例であろう。但し、私見の部分も含まれるので、あくまで参考とし自社でのルール作成に役立てて下さい。

Q17:良品誤検知の対応はどうしたらよいか?歩留まりのこともあるので。
A17:検査員が不合格判定したものを良品戻しすることはよくない。
しかし、それぞれの検査員には、検知能力差があるので、教育において全体レベル、個人レベルをフィードバックすること。また、誤検知が疑われる場合は、調査として再検査を指示し、どの様な異物が検知されたかもヒアリングするとよい。決して、この程度の大きさの異物は合格だという指示は出さないこと。
 
Q18:検査作業リーダーについて
A18:リーダーが必ずしも微小異物を検出でき、また正確に検知できるとは限らない。個人の特性を把握し、能力に応じ、作業毎に担当可能業務を認定すること。
 
Q19:AQLの考え方で、致命や重欠点において合格判定基準が例えば2Ac、3Reとすることは問題ないのでしょうか,注射の場合内容異物に関しては基本0Ac、1Reと考えますが、異物大きさ等によってそうすることの考え方はおかしくないでしょうか。また、他社ではどの程度のAQLを抜取検査で採用されているでしょうか。
A19:AQLの設定において、致命欠点というのは、生体由来異物、ガラス、金属等を指定することが多いと思います。これらは、ロットアウトとなる対象物であり、あくまで0Ac,1Reとすべきです。 重欠点については、各製品への品質影響の程度により、各社で大きさや色、材質を設定している。
<参考>
AQL(致命欠点): 0.01%
AQL(重欠点) : 0.1~0.25% 
AQL(軽欠点) : 1.0~2.5%
 
Q20:注射剤の全数目視検査で以下のような不良が見つかった時の判断はどうするべきか? 
・あるロットで外来性異物(致命欠点)が見つかったとき、
 そのロットは目視検査後に出荷できるか? 
・あるロットでバイアル/アンプルのガラス由来の破片が多く見つかったとき、
 そのロットは目視検査後に出荷できるか? 
・あるロットで注射溶液中に再結晶が多く見つかったとき、
 そのロットは目視検査後に出荷できるか?
A20:いずれの事例も、医薬品等の回収に関する情報(PMDA)にて、自主回収されているものである。慎重に検査したとしても、見逃しは避けられないので、出荷は控えるべきである。特に、致命欠点(毛髪、虫等)については、無菌保証の面からも出荷すべきではないと考える。安全サイドで考えること。
 
Q21:用時溶解型の粉末注射剤の目視検査を効率的に行う方法とは?
A21:粉末注射剤の場合、微小異物は検知が難しい。照明や背景を工夫したり、粉末の攪拌方法を手順化することで検査員の個人差を少なくすることが重要である。
必要に応じ、抜取り検査も考慮すること。
 
Q22:これまで、他社の事例を参考にし、製品特性を考慮して、相手先と協議・合意した上で外観規格設定を行ってきたが、一般的/標準的な外観検査規格設定方法・手順とは? 
A22:相手先と協議・合意したものであるのならば、現在実施されている方法が一般的であるとしてよいのではないか。異物サイズについては、限度見本の作製、外観検査不良率についても追加するのがよいかもしれない。実際に、苦情等で問題とされた異物現品を確認し、規格を見直すことも必要である。
 
Q23:検査員(QC・製造)の段階的資格認定制度は、各段階にて、具体的にどのような認定内容で行うのがよいか? 
A23:連載の中で示した通り、検査業務だけでなく、GMP、衛生教育等も含めるのがよい。また、剤型、品目毎の認定が望ましい。
 
Q24:検査員によるバラツキを防ぐための、効果的な教育方法と認定方法は?
A24:検査員の感覚だけで検査を進めると、必ずバラツキが生じる。各検査員に自分の検査特性を理解させるために、各自の検査排除品と他の検査員の排除品を比較させる機会を設けてはどうか。但し、それぞれが排除した不良品を、「これは合格だ」という指示はしないこと。
 
Q25:出来るだけ短時間で行える外観教育はどのようなポイントで行うのがよいか?
A25:品目毎の教育が必要だが、剤型毎に類似グループ分けを行うのがよい。また、教育だけでなく、日常業務の中で各検査員の排除傾向を掴んでおくことも有効である。


 

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