【第44回】Operational Excellence 実行の勘どころ 、“変革推進、品質は儲かる”

新しい方法をデザインする、問題解決と課題解決の違い(その2)

前回に続き、問題解決と、新しい方法をデザインするための課題解決・デザイン手法、それらのアプローチ方法について紹介します。はじめに言葉の定義を復習しましょう。

  • 問題(Problem):あるべき状態に対して現状何らかのマイナスポイントがあり、あるべき状態に対して劣っている、決めたスペックから外れている、ギャップがある状態や事柄です。
  • 課題(Issue):めざす状態に対して、現状はそこまで到達しておらず、目指す状態と現状にギャップがある状態や事柄です。

 プロジェクトや改善活動において、問題と課題はどのように使い分ければ良いのかが、今回のテーマです。

【問題と課題の使い分け】
 実際には1つのプロジェクトを扱う上で、問題と課題が両方含まれている場合があります。両方を解決しなければならない、問題なのか課題なのか仕分けできない場合もあります。日本語で「これは問題だ、改善が必要だ」という言われる中で、問題(Problem)ではなく、課題(Issue)として扱ったほうがよいことがあります。問題と課題が混在し、目標達成のために新しいアイデアが欲しいのに、ギャップを埋める原因究明をしていることがあります。

 プロジェクトに取りかかる前に、問題と課題の違いをメンバーに説明し、はじめに問題なのか課題なのかを区分けすることは有効です。

  • 問題解決を行う:原因解明を実施するアプローチを行う DMAIC
  • 課題解決を行う:ギャップを埋めるアイデア出しを実施するアプローチを行う DMADV
< 図44-1 問題解決と課題解決のアプローチ >

  なぜ問題解決と課題解決の違いにこだわるのでしょうか。問題なのか課題なのか、解決を依頼する側も受ける側も、はじめは曖昧に話します。双方が曖昧なままプロジェクトや業務を進行して、それでうまく回るなら、細かな言葉の定義はいりません。一方で依頼側と受ける側で食い違う場合もあります。そこでプロジェクトリーダーは、問題解決と課題解決の違いを理解しておくと、その後のアプローチで迷わなくてすみます。

 会社組織で仕事をしていて、「何故このような問題が発生したのか、原因を突き止めて報告してください」という指示が出されると、担当者は萎縮することもあります。自分の失敗ではないだろうか、何か責められるのではと心配になります。特に顧客からのクレームに対してはそうです。仕事なので失敗はつきものです。そこで部門や自分たちが悪くないことを証明すること、失敗しないように安全策ばかり実行しようとします。特にヘルスケア業界では製品品質が第一優先で、コストを忘れがちです。

 話が少し外れますが、昨今の上司やマネジメントは、業務指示をやんわりと伝えることが多くなりました。強い言葉で指示を出すと、言葉がきついと言われます。仕事の進め方を細かく定義すると、部下から裁量がないと言われます。業務指示を伝えるのが何かと難しい時代です。そこで「メンバーでよく考えて、実行してください」のような言い回しになることがあります。上司やマネジメントは怒ってはいけない、仕事ではあまり感情を出さないようにと研修で習います。その結果、怒ったり、大きな声を出したりする上司は少なくなりました。部下も上司から怒られなくなりました。たまに業務上で注意や指摘をされると、慣れていないのでショックを受ける人もいるほどです。管理職の悩みどころです。

 難しいプロジェクトを実行するとき、OPEX活動はあちこちで壁にぶつかります。問題解決手法、シックスシグマ手法で原因を究明しますが、真因(根本原因)にたどり着かない場合もあります。原因は複数あり、本当の原因(真因)は何だか分からない、機械の老朽化や原料素材のバラツキにより再現できない、要因分析をしてもよく分からないこともあります。現場担当者は、原因究明には膨大な時間がかかると言います。そのような場合には、原因究明を一旦止め、問題解決から課題解決、デザイン思考に切り替えるとよいです。
 そもそもルールから見直してみたらどうか、全く新しい機器やシステムを導入する、予算や人員工数枠を取り払って考えてみるようなことです。このような思考の切り替え、アプローチの修正でOPEX活動の壁を乗り越えたことがあります。ゼロから1を生み出す発明ではなく、今あるプロセスを再構築するイメージです。私なりにデザイン思考が有効と感じた瞬間です。

 

 

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