医薬品工場に求められているHSE要件と事例【第41回】

国際化に対応する医薬品会社に必要なHSEとは?
「日本の製薬企業にHSE(健康安全環境)Global Standardが必要な理由」


1、    製薬企業のあるべき姿
日本の製薬企業は日本のGMPを遵守して生産活動を行わなければなりません。これは日本の法律に違反するからです。さて、GMPで法的規制を運用管理しているのは厚生労働省です。何か問題が発生、疑問があっても他の行政組織が意見を言ったり、口出しすることはありません。同様に環境問題に関する法規制を運用管理しているのは環境省です。従って、他の行政組織が介入することは基本的にありません。できないと言ったほうが良いのかもしれません。次に人の健康被害について法規制を運用管理しているのはどこでしょうか?労働衛生課、安全課/安全衛生部/労働基準局/厚生労働省 つまり、厚生労働省ですね。さて、厚生労働省がGMPでコンタミ防止を法制化することで患者様の安全を守ることに主眼を置いて法規制を日々運用するのは当然の事と考えねばなりません。又、他の部局は口出しすることはありませんし、出来ないのです。一方、欧米の国際的な製薬会社は各企業のHSE(健康安全環境)グローバルスタンダードを用いて横の連絡よろしく高活性医薬品原料やCMR(発がん性、変異原性、生殖毒性)によるオペレーターの健康被害を守るべく行政組織の規制や社内監査などにより、社員の健康被害を未然に防止すべくH(健康)とS(安全)、E(環境)への影響をリスクアセスメントをして一体化管理して20年以上が経過してきました。これには欧米の行政組織がHSE一体化された組織で厳しい法規制と指導を行ってきた成果です。日本の行政も変革を行い縦割り組織であっても人の健康安全を守ることの大切さが第一優先であることを行政組織間の仕事のプロジェクト化などにより達成されねばなりません。

2、    国内製薬企業の現状
しかし、多くの国内医薬品工場は国内法で求められているGMP規制などに適合することを優先せざるをえません。国内法で具体的に基準値が示されていないHSE(健康安全環境)の特に生産現場で働く人々の健康被害関連の法規制は厳しく運用しなければなりませんが具体的な規制にまで至っていない現実があります。改正安衛法ではラベル表示とリスクアセスメントを行う事を要求されているが具体的な基準値が提示されていない。出来れば具体的な基準値としてのOEL(Occupational Exposure Limit)の8時間TWA(Time Weighted Average:時間加重平均濃度)値を用いた基準値を管理するよう規制し、間違っても健康被害が発生しないよう担保すべきであるがまだ当局の監査や指導が行われていません。しかし乍ら、改正安衛法以外の法規制が厚労省以外の行政組織からの法規制として要求されても良さそうな重要課題であるにもかかわらず、話題にもならないのはどうしてでしょうか。これを受けて企業は大切な社員の健康被害が発生しても行政責任ではなく企業の責任となる可能性があることを先行察知して必要なグローバルスタンダードで曝露管理を進めるべきところが筆者の知るところではまだまだのようです。理由は日本国内から得られる技術ではなく曝露管理技術はEUの技術であるため、それほど簡単ではないことが理由の一つに挙げられます。残念乍ら、企業のHSE担当者が自ら勉強して専門家となることは大変厳しいと考えられます。このEUの曝露管理技術を企業内に浸透出来ていないため、日本国内の製薬工場の曝露管理技術を企業内に浸透させなければならない現実が壁となっていると思います。その他、国内行政と製薬企業の両方の壁(課題)となりそうな問題点を以下に列記しておきます。

1)EUのHSE Global Standard 法律構成事例(基本となる各国法令/曝露濃度測定の位置付け/評価基準/策定組織)
・ 米国:Occupational Safety and Health Act of 1970 / Occupational Safety and Health Standard/Occupational Exposure Sampling Strategy Manual 1977/NIOSH
・ 欧州(EU):Health and Safety at Work etc. Act 1974/The Control of Substances Hazardous to Health Regulations 2002/Monitoring strategies for toxic substances & EU National Standard BS EN689(2018), Workplace exposure Measurement/HSE & CEN (EU Standardization Committee
2)曝露管理技術の教育不足
3)曝露管理技術の国家資格制度がない
4)国内には曝露管理技術の専門家を育成するレベルの教育を出来る人が少ない
5)国内SDS(Safety Data Sheets)発行元にOEB(Occupational Exposure Band),OEL,CMR等の明記する旨の改善命令や指導が必要
6)国際化、多様化で日本国内の製薬工場で働く人々が増えてきていることを受けてHSE Global Standard で健康被害を具体的に低減する旨の行政と企業の両罰規定がない

 

 

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