医薬品の外観目視検査における要求品質の明確化のために【第30回】

外観検査員の教育訓練


1.外観検査員の教育訓練
 無菌操作法による無菌医薬品の製造に関する指針:平成23年4月20日付け厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課事務連絡には、人による目視検査においては,検査作業手順書に次のような条件を定める必要があるとされている。 これらは、基本的に内服固形剤やその他の剤形にも適用できるものである。

 ① 検査手順、検査ピッチ、単位検査対象当りの所要時間、休憩の間隔 
 ② 検査台、検査ベルト、検査燈、検査用拡大鏡、検査姿勢(椅子) 
 ③ 検査位置の照度、検査室の照度、背景の色

 目視検査員の教育訓練では、検査実務教育だけでなく、GMPの基礎を含めた理論教育も重要となる。
 教育範囲は、医薬品が、生命関連製品であること、ユーザー要求の厳しさ、不良品の市場流出の影響等にも及ぶものとなろう。全ての教育訓練が終了した段階で、結果を評価しGMP責任者による認定を行なう。検査員の視力低下や体調不良を考慮し、認定には一定の期間を設定し、再認定の手順を決めておく必要がある。

1.1 教育項目
 教育項目には、以下の項目を考慮すること。

 ○ 不良とは?(異物とは?)
 ○ GMP概論(なぜGMPを遵守しなければいけないのか)
 ○ 衛生管理(検査工程で汚染、異物混入を起こさないために)
 ○ 検査方法、手順、判定基準(SOPに基づき、全ての検査員に同じ内容で教育するため)
 ○ 異常、逸脱時の連絡方法(通常と異なる状態、異物を発見した場合のアクションを明確に
   するため)
 ○ 回収事例(どの様なものが重大事例として、回収となっているのかを知らせるため)

1.2 訓練項目
 訓練項目には、以下の項目を考慮すること。

 ○ 不良サンプルの確認、理解(欠点区分毎に問題点を明らかにする)
 ○ 不良品排除訓練(意図的に混入させた不良品を通常検査スピードで検知、排除できるか)
 ○ 実地検査訓練(資格認定者の上流で検査を行い、下流の認定者から不良判定基準以上の
   異物が検出されなくなるまで)を、日々の集計を行ないながら通常、1~2ヶ月実施
   (剤形、品目にもよるが)。
 ○ 排除した不良品の分類訓練(不良品を定められた分類に従って分別し、集計する)

 検査員の個人差と経験差につき、経験者と未経験者の異物検出率の比較を行った事例を示す(図表1)。
再記載:医薬品の外観目視検査における要求品質の明確化のために【第24回】
    ~自動検査システム~

 医薬品の外観目視検査経験者(A、B)は、連続検査時間内も安定した異物検出率を維持できているが、未経験者(C、D)は、異物検出率の要求度を満たしていない。未経験者Cは、半年の教育訓練後に異物検出率が向上しているものの、未経験者Dは、教育訓練前から異物検出率が低く、半年後も異物検出率が不十分と判断される。誰もが目視検査業務に適性があるとはいえない事例である。
 

図表1検査員の個人差と経験差

 

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