【第8回】GCP-SOPライティング - GCPで必要なSOPと作成技法 -

 今回は、治験依頼者における治験薬管理、すなわち治験薬の製造と保管、そして実施医療機関への運搬と交付・回収に係る一連の手順について紹介しよう

治験依頼者における治験使用薬管理の流れ
 GCP省令第17条(治験薬の交付)ガイダンスでは「治験依頼者は、治験薬の品質管理、運搬及び交付を確実に行うための必要な手順を定めておくこと」と規定している。すなわち治験依頼者が作成するSOPには、治験薬GMPに従って製造し品質試験を行って出荷された治験薬を、保管施設で保管し、出庫して運搬し、実施医療機関へ交付する手順を定めておかなければならない。さらに必要に応じて未使用治験薬や空き箱を回収して廃棄する手順も記載する必要があろう。
 現在では、治験薬の製造をCMO(Contract Manufacturing Organization、医薬品製造受託機関)に委託し、治験薬の保管と入出庫を専門業者(いわゆる治験薬デポ)に委託し、運搬業者に運搬と実施医療機関への交付までを委託し、さらに廃棄業者に治験薬と空き箱などの廃棄を委託するというように、多くの業務を外部委託しているのが実情である。
 第17条ガイダンスで「治験依頼者は、運搬業者等を用いて実施医療機関に治験薬を交付する場合には、治験薬の品質管理、運搬及び交付を確実に行うために、当該運搬業者等と契約を締結する等必要な措置を講じておくこと」と定めている。この文言では「治験薬を交付する場合」と記載されているが、治験の管理に関わる全ての業務、すなわち製造から、保管、運搬、交付、廃棄までの業務について、適切な委託先を選定したうえで契約を締結するなどの必要な措置が必要だと解釈すべきである。
 

治験薬の製造
 治験薬の製造については「治験薬の品質の確保のために必要な構造設備を備え、かつ、適切な製造管理及び品質管理の方法が採られている製造所」において製造された治験薬を交付しなければならないことがGCP省令第17条(治験薬の交付)で規定されており、この製造所というのが、治験薬GMP通知に適合する製造所であることはいうまでもない。治験薬GMPは「治験薬の製造管理、品質管理等に関する基準」(平成20年7月9日付け薬食発第0709002号厚生労働省医薬食品局長通知)であり、GCP省令第17条第1項(医師主導治験の場合は第26条の3第1項)に基づく局長通知ということであり、GMP省令とは異なる。
 このように治験薬は、GCP省令第17条に基づくものの治験薬GMP通知に定められた内容に適合する製造所において製造しなければならないことから、治験薬の製造に関しては、GCPの手順書に盛り込むよりは治験薬GMPの手順書として作成するのが一般的である。さらにPIC/SのGMPガイドラインAnnex13などの規制要件が盛り込まれて作成されている必要があろう1)
 治験依頼者は、治験薬の成分、分量、規格及び試験方法、製造手順、治験の概要その他必要な事項について記載した「治験薬に関する文書」を作成しなければならない。試験方法や製造手順については治験薬GMP部門に任せることになるが、少なくとも治験の概要については開発担当部門で記載する必要がある。この治験薬に関する文書は、当該治験薬の開発の進捗や新たに得られた知見等を踏まえて適切に改訂しなければならない。このような治験薬に関する文書の作成と改訂に関する手順はGCPのSOPとして定める必要がある。

 治験薬は製造承認された医薬品ではないので誤って使用されてはいけない。それゆえに治験薬の容器又は被包に「治験用」と明記しなければならない。この他にも、治験依頼者の氏名や住所、製造番号などを記載しなければならないことがGCP省令第16条(治験薬又は治験使用薬の管理)第1 項に定められている。これとは逆に記載してはならない事項というのも第16条に定められている。すなわち記載してはならないというのは、予想される販売名や効能効果、用法用量であり、治験薬はまだ製造承認されていないことと、承認された後の販売促進に繋がらないようにという意味合いである2)
 

治験薬の製造記録
 GCP省令第16条第5項に「治験依頼者は、治験薬又は治験使用薬に関する次に掲げる記録を作成しなければならない」と記載されている。この「記録」には治験薬の出納に関する記録の他に、「治験薬の製造年月日、製造方法、製造数量等の製造に関する記録及び治験薬の安定性等の品質に関する試験の記録」が含まれる。したがって、治験薬の製造記録と品質試験(安定性試験)記録を、開発担当部門として治験薬製造部門から入手しなければならないということである。
 治験終了後に、治験薬がその規格を満たしていることを再確認できるように十分な量のロットサンプルを確保し、経時的にロットサンプルを分析した記録を作成し保存しなければならない。さらに安定性が確保されている間はロットサンプルを治験データの解析が終わるまでの期間保存することとなっている。規制当局による適合性調査の際には、第16条に定めた適切な表示が治験薬の容器又は被包に行われていることが確認される。そのための、いわゆる「保存サンプル」や「見せサンプル」と呼ばれる治験薬を保存する必要があり、その保存量と保存場所などを設定する旨をSOPに記載しておく。
 

治験薬の保管手順
 治験薬保管施設は治験依頼者によっては、治験薬を製造した施設内であったり、治験薬保管の専門業者(治験薬デポ)であったり、あるいは近年では少なってきているが開発担当部門やCROの治験薬保管庫を利用する場合もあろう。いずれであっても、治験薬の保存に適した温湿度管理や防犯防災などのセキュリティー、あるいはペストコントロールなどで適切に管理されていなければならない。開発担当部門の治験薬保管庫であればこれらの要件をSOPで定めるとともに保管庫(保管室)を管理する手順を記載する必要がある。CROや専門業者に委託するのであれば、これらの受託者を管理する手順を定めておく。

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