知っていそうで知らない漢方薬【第1回】
【漢方とは】
皆さん、『漢方』と聞いて何をイメージしますか?『苦くてまずい』『飲みにくい』『即効性が無い』『年配の方が飲むモノ』などあまり良いイメージが無かったりしませんか。
遡ること飛鳥・奈良時代に、中国で発展してきた伝統医学(中医学)が日本に伝わり、独自に発展してきたのが日本の漢方(漢方医学)です。その後も時代ごとの中医学が度々伝わっては加わるなどして、室町時代の頃には日本独自に進化し、江戸時代に入ると、鎖国が始まったことで更に独自化が進みました。江戸中期には、出島を通じてオランダ人から伝わった西洋医学が、蘭方(蘭=オランダ)または洋方と呼ばれるようになったため、この中国を起源とする従来の医学は「漢方」と呼ばれるようになりました。
中医学と漢方医学では、両分野ともベースとなる生薬の組み合わせによって病気や未病(まだ病気には至っていないが健康ではない状態)を治すことは同じですが、診断方法や処方の考え方は異なります。中国と日本では気候も違えば、生育している植物の種類も異なります。更に植物だけではなく、人の体質も異なります。そのため、長年に亘って経験と実績を積み重ねることによって、日本の風土に合わせた治療や体質改善の方法が発展し、現在の漢方となったのです。
【漢方薬と生薬と民間薬って何が違うの?】
(漢方薬とは)
生薬を原料にし、どのような組み合わせがどの病気や不調に効くのか、長年に亘って研究され、作り上げられてきました。まさしく先人たちが英知を結集し、努力を積み重ねてきた日本独自の伝統薬なのです。
皆さんも病気になったとき、一度は病院で漢方薬を処方されたご経験があるかと存じます。現在、医療用漢方製剤は148処方が薬価収載されています。一方、一般用漢方製剤(OTC医薬品)については厚生労働省が定める「一般用漢方製剤製造販売承認基準」に現在294処方が収載されています。そのうち、承認が得られたものが製造販売されています。剤形は服用し易いエキス顆粒剤や錠剤、一般用漢方製剤ではドリンク剤やゼリー剤、チューブ入り軟膏剤など消費者が使いやすいように工夫されています。
(生薬とは)
生薬は、漢方薬を構成する原料で、それらが組み合わさった物が処方です。薬効がある植物(根や茎、花、果実など)・動物(角や胆石など)・鉱物(鉱石や化石など)などを加工し、薬として使用される状態になった物が生薬です。生薬の約8割は中国から輸入されていますが、天然物のため、収穫された時期や産地、気候によっても大きく左右され、品質管理がとても大変です。例えば収穫時期によって色調や味が変わりますので、製品としてドリンク剤やエキス剤に加工した際に、その違いがダイレクトに影響を及ぼすこともあります。
同じ生薬であっても、食品と医薬品に使用できる生薬があります。例えば杏仁豆腐の上にいつもちょこんと乗っている赤い実は「クコの実」と言いますが、医薬品として使う場合、「枸杞子(クコシ)」と名称が変わります。同じクコの果実ではありますが、名称が変わるところも漢方の世界ならではのことだと感じています。
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