再生医療等製品の品質保証についての雑感【第46回】

第46回:バリデーション設計の考え方 (2) ~ 再生医療等製品におけるバリデーションの要件


はじめに
 引き続き、今回もバリデーション設計について、雑感を述べさせていただきます。前回、バリデーション活動の目的と、その実施内容について概説させていただきました。今回からは、再生医療等製品(細胞加工製品)に関わる、バリデーション設計の考え方およびその課題について、雑感を述べさせていただきます。そもそも最終製品の同定ができない細胞加工製品のCQA(重要品質特性)決定については、従来のICH Q8(R2)などで要求される絶対的なもの(QbTの可能なレベル)が準備できません。この固有の特徴については、あらためて皆さまと見直してみる必要があると考えます。

● バリデーションとCQA/QTPP
 ICH Q8(R2)などでは、QbDの考え方を含め、適切なバリデーション設計の実施には、工程設計開始前にはQTPP(目標製品品質プロファイル)およびCQAと確定しておく必要があると示しています。細胞加工製品製造のCQAには、以前(第29-35回: QbDを意識した工程設計の考え方)にてお話ししたように、プロセスパラメータ(PPs)変更の影響を受けるので、培地成分や培養条件など、予め治験前にPPsを固定しておく必要性があると考えます。これに対し、実際のバリデーション設計で難しくなるのは、培地交換や継代操作などの培養環境調整を実施した時に生じるPPs(第32回参照)の中で、特に、時間依存性に伴う変更による影響となります。
 具体的に、細胞加工製品が、「最終製品の同定が困難」であるとか、「プロセス・イズ・プロダクト」であると説明すると、概ね、抗体薬品など他の新モダリティ医薬品と近似であるというイメージを持たれますが、実のところ、全く違うのです。以下の表に、製造工程に培養を用いる、従来の医薬品(低分子医薬)、新モダリティ医薬品(中分子・抗体医薬品など)、および再生医療等製品(細胞加工製品)における製品特性と製造特性の違いについて示します。表の上段における、細胞加工製品が、従来の低分子医薬と異なり、品質のばらつきに対する評価性が低く、プロセス・イズ・プロダクトであることは抗体医薬品等と近似であると認識します。

表. 医薬品の種別による製品特性および製造特性の違い

 一方で、製造工程に関する考え方は大きく異なります。その原因となるのが、下段に示すように、製造利用する細胞が、細胞加工製品製造以外は不死化された株化細胞(培養に適した細胞)であるのに対し、細胞加工製品製造ではヒト幹細胞(治療に適した細胞)を選択する必要があることです。これにより、細胞加工製品製造では、スケールアップによる細胞の老化を考慮する必要が生じます。さらに、従来の医薬品製造や新モダリティ医薬品製造において当たり前に採用されてきた、「流加培養」を適用することができず、その結果として、細胞加工製品の工程設計は、プロセス・イズ・プロダクトだけでは足りないのです。

 

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