医薬品の外観目視検査における要求品質の明確化のために【第25回】

2023/01/27 品質システム

自動検査機と目視検査との違いについて。

自動検査機と目視検査との違い

1.自動検査機と目視検査との違い
 人による目視検査と自動検査機による検査で最も異なる点は、同一レベル異物の持続的かつ連続的な検知ではないだろうか。自動検査機に自動供給機、自動分配器を接続することで、夜間無人運転さえ可能になっている。人による検査では、連続検査時間、1日の作業時間にも限度があるので、自動検査機導入の大きなメリットである。しかし、自動検査機は、「条件設定通り」に連続的に検査するのであって、目視検査では、「いつもと違う(想定外の)不良」であっても人が直感的に検知することが有り得ることを承知しておくべきである。
 以上より、生産が安定しており、不良把握のできている品目に自動検査機を適用するのは、比較的リスクも低く、効率的であり、大きなコストダウンが期待できる。一方、新規品目への適用は、不良把握のための検証を十分に行なう必要がある。これについては、次項で記載する。

2.検査工程のバリデーション
 検査工程のバリデーションについては、無菌操作法による無菌医薬品の製造に関する指針(平成23年4月20日付け厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課事務連絡)には、以下の通り記載されている。

A6.4.2バリデーション
1) 人による検査においては,限度見本等によって,検査員が所定の検査能力に達していることを確認すること
  この検査能力の確認は視力検査とともに定期的に実施すること。
2) 検査機のバリデーションにおいては,限度見本等によって,所定の検査能力,除去能力を有することを定期的に
  確認すること。
3) 検査工程のバリデーションに使用する異物サンプルは生産から得られた異物サンプルを使用することが望ましい。
  これらのサンプルは品質部門の承認を得ること。


 自動検査機の導入が進んでいるとはいえ、高額な設備であり、機種選定に際しては、処理能力、オプション機能(自動供給、自動分配等)について、十分に必要性を検討し決定すべきである。

 また、導入検討から、選定、発注、製作、据付、バリデーションを経て、運用開始するまで1年以上かかる場合もある。特に、バリデーションは、適格性評価としてDQからIQ、OQ、さらには検査対象品によるPQ、実生産規模での確認まで、時間ばかりでなく作業量も膨大となることを覚悟しなければならない。初めて自動検査機を導入する場合は、検査機メーカーから事前に全体計画の情報入手しておくと準備が進めやすい。 
 バリデーション手順、内容、必要となる関係書類の一例(錠剤自動検査機)を次ページ(図表1)に示す。

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執筆者について

新井 一彦

経歴 C&J 代表
化学系企業にてバイオテクノロジーを利用した医薬品の探索、開発研究に従事。その後、開発医薬品(無菌製剤)の製造工場立上げに製造管理者として関わりGMP組織体制、基本構想を構築した。
平成17年の改正薬事法完全施行に合わせ、新たに製造販売業を取得するため某ジェネリックメーカーの設立に関与。取締役信頼性保証本部長として総括製造販売責任者の責務を担った。
現在、C&J 代表として、講演、執筆、国内外のGMPコンサル業務活動を推進。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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