基礎からのGVP【第24回】

~GVPの求めるもの~

はじめに
医薬品の適正な使用を目指し、製造販売後の使用実態下での情報を収集し適切な評価と、更なる服用指導の根拠となる医薬品情報を集積するために、これまでに再審査制度、GPMSP省令、GVP省令とRMPによる計画的な安全性監視体制の確保と環境が整備されその遵守に重きがおかれてきた。
 

各製薬会社においても、適切な手順書(SOP)を制定し、業務体制を整備し製造販売後の許可要件であるGVP体制の保持に努めているところである。法令順守の精神・活動は稀に不遵守例も報告されるが、その水準はかつての混沌とした時代から比べると著しく高まったと、長年にわたり安全性管理業務に携わった者として自負している。しかしながら、医薬品情報評価といった本来の目的からみて、果たして高まっているのかと自問自答してやまない。基礎からのGVPの最終章として、業務しているなかで、「えっ、ホント~?」と思われる「あるある」を紹介するので、今後のあるべき姿、それに向けての方法について検討のヒントとなっていただければ幸いです。

1.情報の収集のあるある医療機関から、特に薬剤師さんから「○○のような副作用は報告されていますか?」
「その症例の経過はわかりますか?」と質問され、可能な範囲で回答した後に「ご質問に該当するような症例の詳細調査にMRを伺わせたいのですが?」と依頼すると、「医師に確認が取れないから」「患者が医師に知られるのを嫌がっているので」と調査の依頼を断られてしまうことが多々ある。企業は「調査を断られたことを確認している」と記録して、GVP上の対応は完了しているとして済ませている。企業によっては予め、追加調査不可のチェック欄を設け、そこにチェックするだけで完了としているケースも見受けられる。情報の提供・収集は医療関係者と企業とが協働して医療情報を充実させることが優先されるべきだが、法令順守のうしろになってしまっている。医療現場からの情報が提供されないと情報は集積されない。手順どおりに対応しているから問題ないでは、適正使用情報は形成されない。

2.文献・学会報告のあるある
医師が良好な経過をたどった自験例を学会で発表した時の話である。発表の準備をしながら届いたばかりの学会要旨集を改めて確認していると、何人ものMRから質問や、面会の依頼が急にあり、対応に苦慮したとのことである。それというのも、治療時に発生した副作用のことを臨床経過欄にサラッと記載したが、その内容について確認をしたいので、面談したい、あるいは発生した症状は重篤ですか?転帰は?因果関係がある薬剤は?等々の質問であった。医師は有効な治療について発表することを意図していたため、副作用についてはほとんど要旨には記載していなかったため、使用されていた薬剤の関連企業から確認のための質問が多く寄せられたとのことである。文献・学会報告で重篤性や薬剤との因果関係を明確に記載していないと、企業は副作用報告対象か否かを判断するために必要なGVP上の行動をとることから生じる事態である。薬剤との因果関係が明確に記載してあったとしても、一般名での記載であったことから使用した製品名は何かとの質問が、先発会社はもちろん、多くの後発会社からもと、さらに多の確認依頼が発生することになる。

3.外国症例あるある
医療関係者以外の者から報告される、「入院した」、「死亡した」に関する不明確な情報が氾濫している。多くの場合、米国における保険請求情報から弁護士事務所からの報告である。自身の経験であるが、末期のがん患者が死亡した時に使用していた薬剤すべてに関し、因果関係に関する情報は皆無で、制吐目的で○○を使用していた患者が「死亡した。」あるいは、「入院した。」のCIOMSが海外本社・関連会社から何症例も報告され、1症例毎に症例内容を確認し、担当者が作成した評価票を承認し、国内の症例管理データベースに入力されていることも確認するという、GVP手順に則して処理をしていた。通知にて、医療関係者以外の報告に関して、「医学的評価がないものは必ずしも措置を求めるものではない」旨の取扱いが示されてはいるが、安全性確保の面からはそれほど価値が高くない情報についてもリソースが割かれている現状がある。その当時、世界各国・地域の安全管理責任者(Local Safety Officer)は42人いたが、かかるリソースは42倍・・・・。安全確保以外の意図に基づいた情報の発信は如何なものかと? 情報漏れの防止か、リソースの濫用か、常に悩むことではある。無限のリソースがあるのであればいいのだが、と。
 

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