医薬品開発における非臨床試験から一言【第37回】

化合物から薬への道のり

創薬をキーワードに化合物から薬への道のりについて考えてみます。有望な化合物を見出し薬にまで仕上げる創薬過程は大変に険しい道のりとなり、成功すれば、保険償還による販売になります。日本では、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)に従った研究開発が基本になります。

有望な化合物の発見には、様々なステップがあり、製薬企業が各々のノウハウにより新薬を創成しています。この過程を創薬(Drug discovery)と呼び、化合物の探索から非臨床試験を経て臨床試験までの多くの分野に分かれて、まるでオーケストラの演奏のように、1つの目的(創薬)を達成するために調和(harmonize)しています。

薬とは何でしょう。野草などの経験的な効き目を根拠とした民間薬から、確立した処方で生薬を煎じて服用する漢方薬が完成し、さらに医療用エキス製剤へと進化しています。西洋化学の進歩により、合成化合物を用いた創薬が開始されました。そのためにはターゲットの病気について深く知る必要があり、原因について情報を集めて創薬を目指します。

例えば、高い血糖値が続くと、疲労感、頻尿、目がかすむ、皮膚疾患などの症状がみられ、糖尿病かもしれないと診断されます。そもそも高血糖を起こさない食事と、運動療法による生活習慣の改善が重要です。そして、治療薬では、尿中に糖を排出させて血糖を下げる薬や、すい臓に作用して血糖値を下げるホルモン(インスリン)の分泌を促進させる薬や、インスリンの効きをよくする薬などが提供されています。

創薬現場では、糖尿病を発症する機序を科学的に解明し、作用部位を考え、効果を実証することを目指します。創薬のターゲットを決めると、次は評価系が必要です。基礎研究により評価系に磨きをかけます。評価系で効き目のあった化合物、効き目が薬理作用に繋がっていると思われる化合物を見出します(→リード化合物)。この評価系の選択と化合物の質が、その後の創薬研究の成功率に大きく関わってきます。

リード化合物から構造改変により、効き目のスクリーニング試験を続けます。培養細胞を用いたin vitro試験、小動物を用いたin vivo試験などを繰り返します。ある程度の化合物まで絞り込むことができれば、薬理、薬物動態、毒性の分野に渡ってスクリーニング試験を行い、化合物の作用のバランスを見ます。そして少数の化合物、できれば1つに絞り込み、次の非臨床試験に進みます。ここでは、まだ「化合物」の段階です。

そして、「薬」に向けて、薬理試験、薬物動態試験、GLP試験(毒性試験)を開始します。この段階では、必要に応じて信頼性基準かGLP試験を行います。実は最初の臨床試験に移行するためには、薬理試験と薬物動態試験の全てが信頼性基準に沿っていなくても可能です。製薬企業では社内基準に従って、探索試験での検証結果も利用されています。これらの試験で問題が無ければ、化合物を薬にするため、臨床試験のステップに入ります。

非臨床試験で有効性と安全性が確認された化合物は、臨床試験に入ってヒトに用いても安全か、有効かを確認します。臨床試験が無事にパスできれば、医薬品医療機器総合機構(PMDA)に申請して、審査を受け、厚生労働省の承認を受ければ、「薬」となります。そして、製造販売が可能となり、薬価を付けて市販されます。
 

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