医薬品のモノづくりの歩み【第11回】

「モノづくりカルチャー」と「品質(Quality)」

 医薬品製造を取り巻く環境変化が著しい中、「モノづくりカルチャー」を醸成し、変化に対応するマネジメントの考え方、ポイントについて第9回と第10回の2回にかけて紹介しました。第11回から、改めて医薬品製造における「モノづくり」の文化、つまり「モノづくりカルチャー」について話を進めていきます。

 第8回の連載において、「モノづくりカルチャー」を、

「職場の安全衛生と環境保全に心掛け、GMPを順守して、より適正な品質の医薬品を、いつでも必要な量を、より安く、安定して供給することで、顧客(ステークホルダー)からの信頼を得ようとする個人の意識と姿勢、行動、そして組織の有り様」

 と定義づけました。
 この文化を組織全体に定着させるためには、ひとり一人が「モノづくり」の精神を高め、基本要素であるQCD+SEの知識を高めること、さらに、求められる技術・技能を高めていくことで、様々な現場で発生する問題や課題に対して的確に判断し、おかしいと思ったら、直ちに報告、組織で素早く対応する問題解決能力を養うことです。そして、従業員ひとり一人が知恵を絞り、主体性を持った自主的な取り組みを通して、工場が一体感をもった現場力を発揮することであるとしました。
 そこで、本稿では、「モノづくり」の基本要素の一つ「品質」と「モノづくりカルチャー」について取り上げてみたいと思います。

 先にも触れましたが、戦後間もない頃の日本製品は、‶安かろう・悪かろう″ということで、極めて品質が悪く、日本製品のイメージはとても悪いものでした。
 その後、品質管理技術が導入され、更に「モノづくり技術立国」として、顧客ニーズに合った独創製品を生み出し、高品質で付加価値の高い日本製品により、世界の中の日本ブランドを作り出すに至りました。まさに、「モノづくりカルチャー」が花開いたと言えます。
 「モノづくり」に対するこだわりでは、少し古くなりますが、テレビ番組でその大切さをテーマにしたドラマがいくつかありました。 池井戸潤作の「下町ロケット」では、小さな町工場が、ロケットの部品を大手の重工メーカーから受注するのですが、そこに至るまでには、重工メーカーからの無理難題、競合他社からの嫌がらせなど、度重なる幾多の困難を乗り越えていきます。そして、見事に部品を期日までに納入でき、ロケットの打ち上げは無事成功します。
 その決め手は、技術と品質へのこだわりそして誠実な取り組みでした。実際、そのこだわりが、顧客の信頼を得、その結果、会社の経営の苦難も乗り切れた話となっています。
 同じように、「まんぷく」という朝の連続テレビ小説で、インスタントラーメンの創始者夫婦を題材にしたドラマがありました。主人公は発明家で、最初は製塩業を始め、その後、栄養食品を開発販売しますが、その間、幾多の困難でどん底に陥りながら、常に「世のため人のため」を理想に抱き、最終的には世界の食文化に大きなイノベーションを巻き起こす即席ラーメン、そして、カップラーメンを世に送り出すことになります。
 ここでも、今、世の中の人は何を必要としているのか、何を求めているのかを常に思い描き、そして、構想したものを中途半端には出さないという「モノづくり」に妥協を許さない姿勢と、顧客に受け入れられる徹底した味や使いやすさ(使用品質)へのこだわりが描かれています。
 この二つのドラマで共通して言えることは、顧客を最優先にし、より良いものを作り出そうとする品質への徹底したこだわり、そして、納期を必達する、あるいは店頭での品切れを起こさないことで、顧客の信頼を得る、まさに「モノづくりカルチャー」たるものを教えてくれています。
 

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