いまさら人には聞けない!微生物のお話【第16回】

第三部 滅菌

5. 滅菌の手段

微生物を殺滅する方法ですが、これにはいくつか手段があります。製品へのダメージを無視すれば、焼却するのが一番確実かつ安価です。しかしそれでは販売する商品がなくなってしまいます。産業滅菌を考える際は、製品へのダメージを最小限に抑え、製品の内部や表面に存在する微生物だけを確実に殺滅または除去することを考えなければなりません。

滅菌の手段は、物理的な方法と化学的な方法に大別されます。その中にさらにいくつかの方法があります。(図5 参照) どの滅菌法にも利点と欠点があり、残念ながら万能の滅菌方法はありません。滅菌の対象製品や包装の特性、プロセスに許容される時間、残留毒性、さらにコストなどを勘案し、最も適した滅菌方法を決めなければなりません。


微生物が死滅するメカニズムは、滅菌方法によって変わります。主な滅菌方法とそれらの微生物に対する作用(殺滅のメカニズム)について、表3にまとめました。

表3  滅菌方法と微生物の死滅のメカニズム

滅菌法

殺滅のメカニズム(推測を含む)

 

湿熱滅菌

核酸や酵素などの微生物構成成分の熱変性

乾熱滅菌

熱によるたんぱく質などの微生物構成成分の酸化

高周波滅菌

マイクロ波加熱による、微生物構成成分の熱変性

ガス

エチレンオキサイド滅菌

菌体成分(細胞壁、DNA、アミノ酸など)のアルキル化

過酸化水素ガス滅菌

過酸化水素の酸化作用による

過酸化水素プラズマ滅菌

フリーラジカルによる核酸の構造変化

二酸化窒素ガス滅菌

NO2によるDNAの破壊

放射線 

ガンマ線照射滅菌

放射線の電離作用によるDNAなどの破壊。

電子線照射滅菌

ろ過

ろ過滅菌

微生物の物理的な除去

滅菌の手段としては、上記のように様々なものがありますが、医療機器の滅菌では、エチレンオキサイド、湿熱、ガンマ線、電子線の4種類が多用されます。医薬品においては、湿熱、ろ過(液剤)がしばしば使われます。また無菌医薬品の容器については、放射線や乾熱が多く使われます。病院内での滅菌では、湿熱(オートクレーブ)、エチレンオキサイド、プラズマ、グルタルアルデヒドが多用されます。上述しましたように、万能の滅菌方法はありませんので、それぞれの特性や限界を十分理解し、適切な方法を採用しなければなりません。

医療機器業界における産業規模での滅菌で中心的に使われる4種類の滅菌方法について、それらの概要を表4にまとめました。

表4  主要な産業滅菌方法とその特徴

 

エチレンオキサイド

湿熱

ガンマ線

電子線

作用の本体

エチレンオキサイド(C2H4O)という化学物質

100℃以上の高温高圧の水蒸気または水

放射性同位元(コバルト60)から出る波長の短い電磁波

人工的に発生させた高速度の電子の流れ

利点

  • ほとんどすべての材質に対して適用可
  • 50~60℃程度の比較的低い温度で滅菌が可能
  • 毒性はなく、安全である
  • プロセスコントロールはEOより容易
  • 毒性はなく、安全である
  • 最終包装の状態で完全な滅菌ができる
  • プロセスコントロールが容易
  • 低い温度で滅菌が可能
  • 毒性はなく、安全である
  • 滅菌時間が短い(製造ラインに組み込み可)
  • 低い温度で滅菌が可能

欠点

  • 毒性が高く、発ガン性もある
  • 爆発性がある
  • プロセスコントロールが難しい
  • 排ガス処理、作業環境管理が必要
  • ガス抜き後でないと出荷できない
  • ポリエチレンなどの非耐熱性素材には使えない
  • 包装の変形、変色が生じる場合がある
  • 一部の素材(ポリプロピレン 、テフロンなど)では劣化・臭気が生じる場合がある
  • 電子部品には適用不可
  • 高価
  • 一部の素材(ポリプロピレン 、テフロンなど)では劣化・臭気が生じる場合がある
  • 電子部品には適用不可
  • 物質透過性が悪い
  • 高価



 

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