医薬品の技術移転のポイント【第9回】

2022/02/18 品質システム

製造場所に関する一部変更承認申請対象事項について。

製造場所に関する一部変更承認申請対象事項

2)品質面の評価の視点
・固体剤であれば、溶出試験の経年での評価を一番気にしていました。
 ・添加剤の製造場所移転(同じ装置移設)
 ・4液性での溶出挙動変化(製造サイト変更)
・注射剤であれば、不溶性異物試験の経年での評価を一番気にしていました。
 ・新規不純物が経年で不溶性異物に
・原薬であれば、不純物、物性、微生物、異物などを確認していました。
 ・トリプトファンの0.01%の不純物

添加剤の製造場所移転(同じ装置移設)で経年での溶出試験が不適合になったケース
 添加剤の製造設備をA国⇒B国へ移設しました。製造方法は同じです。このような変更であれば、QCの受入れ試験で確認して問題なければ、コンカレントバリデーションで問題なければ変更を了解するかと思われます。その会社もその判断をされたようです。念のために変更ロットを安定性試験の加速試験に入れました。そうすると加速試験で溶出試験が不適合になり製品回収になりました。
 溶出試験にデリケートな製剤があります。そのようなデリケートな製剤は慎重の上にも慎重に行うようにする必要があります。例えば、上記のケースではコンカレントバリデーションを行っても、加速試験3か月の結果が出てから出荷するなどの対応をします。そのための生産調整も行います。あるいは加速試験だけでなく45℃の過酷試験を追加で行うこともあります。
 
「ジェネリック医薬品品質情報検討会」
https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/generics-info/0003.html
(参照2022-02-16)
 本検討会では、ジェネリック医薬品の溶出挙動を、先発製剤あるいは品質再評価時の標準曲線と比較して、溶出の類似性が適切に維持されているかを評価することとした。

 製造場所、製造方法、原薬の物性変化(銘柄追加)、添加剤変更などがあった場合、4液性の溶出挙動に品質再評価時に比べ変化がないかを確認しておくことが必須です。
 原薬を滑沢混合だけで製剤化している場合、造粒していても溶けない溶媒で行っている場合は、原薬の物性(結晶形、粒子径、粒度分布など)が溶出に大きき影響する場合があります。この場合も溶出試験がデリケートな製剤では影響を受けます。困ったことに製造時は問題がなく経年で溶出が低下する場合があります。そのため、そのような製剤であれば、原薬メーカーとの品質取決め書に物性の値も盛り込みます。原薬メーカーが取決めさせてくれない場合は、自衛手段として、物性を受け入れ規格に追加します。近赤外は粒子径の影響を受けるので、いつも入荷している原薬と物性が違うかどうかのゲートキーパーになるかもしれません。QCは承認書や日局の定められた受入れ試験を行う部署だと思っている人がいますが、QCは現場に問題のない原料・資材を提供する部署です。そのためには製剤の特徴を知り、原料・資材の特徴を知り、良いものを提供するためにはどうするかを考えて行動する大切な役割を担っています。承認書と日局の試験を、かつ与えられた試料を試験するなら、QCではなくlaboratoryになります。

 変更があった時、どこまで確認するかはまさにQAの能力が問われます。試作を行うかどうか/加速試験を行うか/室温長期安定性試験を行うか、どこまで評価して出荷するかは判断に迷います。すべて行うのが確実ですが、室温長期安定性試験まで行うなら、変更に4年かかってしまいます(有効期間3年として)。つまり、夏の富士山登頂に冬のエベレスト登頂の用意をして上れば遭難するリスクは減るでしょう。しかし、それではコストも時間もかかってしまいます。欠品やコスト増大を招いてしまうという逆のリスクを生み出します。

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執筆者について

脇坂 盛雄

経歴 1979年エーザイ株式会社入社、9年間、品質管理と21年間、品質保証を担う。
専門領域はGQP品質保証、注射剤及び固形剤の異物対応、品質リスクの発見と低減対応 ・医薬品/食品の表示校閲、製品回収リスク回避対策 ・逸脱/苦情対応、変更管理(一変/軽微変更)対応。品質保証責任者(品責)、統括部長および理事を歴任し、2013年9月末に退職。
現在は企業のコンサル・顧問を行う傍ら講演会講師、書籍執筆などを精力的に行っている。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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