再生医療等製品の品質保証についての雑感【第73回】

2025/05/09 再生医療

水谷 学

細胞製造性についての雑感

第73回:細胞製造の品質マネジメントシステム (3) 
~ 「製造プロセスの理解」に必須なもの ~

はじめに
 細胞製品の品質マネジメントシステム構築では、生きた細胞を製品とするプロセス(バイオプロセス)で想定される、プロセス内の細胞が生じさせる乱れ(内なる乱れ)を理解し、適切に制御する必要があります。我々は、複数の工程群(部分工程)で構成されるバイオプロセス(主工程)を適切につなぐ製造の可能性(製造性)について、「細胞製造性」と定義しています。細胞製造性の主な留意点は、のように、内なる乱れから生じるばらつきの制御において、1) 結果が不確定であること、2) 時間依存で変化が生じること、および、3) 結果が遅れて生じたり判明までに時間がかかることです。本稿では、これらの留意点について概説します。


図. 細胞製造性の概念

● 生きた細胞のプロセスで生じる変化の検証は困難である
 細胞は、プロセス中において分散型の乱れを生じさせます。特定の細胞に想定外の変化が生じることで、隣接する細胞の環境(環境特性)が変動し、結果としてさらに大きな乱れが生じる可能性があります。また、その想定される結果は多様で、必ずしも規則性が得られず、制御が困難です。そのためプロセス(細胞)が乱れた結果は「不確定」となります。
 細胞の不確定性を理解し、プロセスで生じる目的細胞の品質に生じる影響を評価する場合は、予め環境特性および作業特性を詳細に定めておく必要があると考えます。細胞が生じさせる結果は、製造プロセスにおける作業手順や、使用する培地等や培養容器(基材や面積など)が異なれば、いつもと同じ(再現性がある)とは限りません。

 

 

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執筆者について

水谷 学

経歴

大阪大学 大学院工学研究科 講師。
1997年群馬大学大学院工学研究科博士後期課程を中退。国立循環器病センター研究所生体工学部にて生体適合性材料の研究を行った後、株式会社東海メディカルプロダクツにて循環器用カテーテルの開発および製造に関わる。2004年より株式会社セルシードにて再生医療に係る開発および品質保証を担当し、臨床用細胞加工物の工程設計や細胞培養加工施設の設計と運用を実施。東京女子医科大学での細胞シート製造装置開発を経て、2014年より現職。細胞製造システムの開発に従事。工学研究科の細胞製造コトづくり拠点において、細胞製造コトづくり講座(社会人教育)および標準化・規制対応に関わる共同研究を担当。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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