ラボにおけるERESとCSV【第125回】

FDA 483におけるデータインテグリティ指摘(95)


7.483における指摘(国内)
前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。

■ AAAAA社 2023/10/27
施設:原薬工場

■ Observation 3
原薬製品に貼付するラベルを製造職員は必要に応じアクセスし印刷できる。ラベルの管理はエクセルにより行われているが、アクセス管理やラベル編集はバリデートされていない。品質部門職員および製造部門職員の両者がラベルのテキスト情報を追加することができる。

★解説:Observation 3
ラベルの管理についてGMP事例集2022年度版に以下の記載がある。本FDA査察において事例集の記載に係る指摘はなかったが、ラベル印刷のシステムも適切に管理しておかないと指摘されるので注意が必要である

GMP 10-18 (受入れ及び保管)
3.資材の受入れ及び保管上の注意事項の例
(1)ラベルの保管区域への出入りは、許可された職員に限定すること。
(2)ラベルの発行量、使用量及び返却量の収支を確認し、合致しない場合には、原因究明を行い、品質部門の確認を受けること。
(3)ロット番号その他ロットに関連した事項が表示された余剰ラベルについてはすべて破棄すること。
(4)旧版及び使用期限切れのラベルは破棄すること。
 
関連して2022/9に実施されたFDA国内査察における経験を以下に紹介する。
2020/1のFDA査察においてDIを含む483指摘があり、それらの是正を完了した後のFDA査察であった。この査察において査察官は前回483指摘の対応状況を書類で確認し続け、最終日に現場ツアーを行いラベル管理を唯一調査した。ラベル管理の調査においてGMP事例集に記載されている事項などを確認した後、ラベルプリント用のコンピュータが調査された。このコンピュータのアカウント管理は個人ログインであったが、日時が変更できてしまった。つまり、「日時がオペレータにより変更できてしまう」との指摘になる可能性があった。しかし、ラベルにはコンピュータの日時タイムスタンプは印字されないので、品質問題にはならないとのことで口頭指導で済んだ。

FDA再査察にそなえDI対応を実施したのにラベルプリンタのコンピュータがDI対応から漏れてしまっていた理由は以下のように考えられる。
① 前回の査察指摘に係るクリティカルな装置を中心にDI対応を実施した
② システム台帳をもとに全システムを網羅的にDI対応しようとしなかった
③ そのため、ラベルプリンタのコンピュータのように目立たないコンピュータはDI対応からもれてしまっていた

システム台帳に登録もれがないようにシステムを網羅的に登録し、それらのシステムに対しもれなくDI対応しておく必要性を痛感した。とくに機器や装置に付属するコンピュータがくまなく登録されているか点検しておく必要があろう。どのようなコンピュータがあるかは現場でしか把握できないので、各職場での自己点検が重要である。

■■■ 環境モニタリングに関する指摘 ■■■
★解説:
データインテグリティ課題ではないが、環境モニタリングにおいて気になる指摘があったのでその概要と解説を記載する。

■ Observation 2

A) 本施設における原薬製品は無菌原薬ではなく、他の施設において無菌液剤にする。非無菌原薬製造である本施設の環境モニタリングにおいてカビが検出されたが、検出されたカビの同定をしておらず殺芽胞剤による清掃もしていない。

B) クラス100,000のクリーンエリアにおいて微生物が検出されたが、その微生物を同定しておらずエンドトキシンを生成するかなどを含め製品への影響を見極めていない。エンドトキシンはろ過滅菌フィルターを通過してしまう。

 

 

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