基礎からのGVP【第11回】

2021/12/17 その他

MedDRAの基本知識について解説する。

情報の集積II

はじめに
1.データベース選択上の留意点
2.報告書作成           第10回 情報の集積I
(1)個別症例
(2)定期報告等ラインリスト

3.MedDRAの基本知識
(1)概要
MedDRA(国際医薬用語集)は医薬品規制調和国際会議(ICH:The International Council for Harmonisation)によって、国際的な情報交換を目的とした国際的な規制情報の共有を促進するために高品質で特異性が高い標準化された医学用語集として開発、ICHとして合意された英語をベースとした副作用用語辞書である。現在、医薬品規制のみならず、医学薬学研究において広く利用されており、多言語(中国語、チェコ語、オランダ語、フランス語、ドイツ語、ハンガリー語、イタリア語、韓国語、ポルトガル語、ブラジルポルトガル語、ロシア語、スペイン語)が作成・提供されている。」と、用語管理団体の解説書には解説されている。
実際、MedDRAが開発されるまでは、国際的に共通した医学用語集がなかったため、情報交換において様々な齟齬が生じていた。また、国内においても承認前、承認後、また、副作用用語と合併症等の疾病用語が独立して設定・使用されている状況であった。このため、医薬品評価をするに際し、医薬品のライフサイクルの様々な段階で異なった用語集を使用することは、データ検索や解析を複雑化するだけでなく、国際的なコミュニケーションも阻害される大問題となっていた。このためICHの検討において医学用語集として英国の行政対応で使用していた用語集に改良を加え、徐々にバージョンアップしていき、2021年11月現在Ver.24.1に至り、確固とした国際共通医学用語集として安全性情報交換に活用され、今後益々、多言語化が計画されている。また、最近では医学会で広く使用されている医学用語ICD(International Classification of Diseases)10や11とのリンク付けや、がん関連学会等で広く使用されているCTCAE(Common Toxicity Criteria of Adverse Event:有害事象共通用語基準)との完全なコラボレーションや、規制データベース(MedDRA 使用)と健康管理データベースや電子的保健診療記録(SNOMED CT 使用)の間のデータ交換を促進することを意図してマッピングが行われるなど、Global化並びに多領域化が図られ様々な分野で活用されている。以下に、少々専門的にはなるが、MedDRAの特性について解説する。
(2)MedDRAの構造
MedDRAは、一定の医学的状態・状況を英語により言語化され、それに特定の8桁の数値が(数値そのものには意味は持たせず)付与される。この8桁数値(コード)と英語による表現が基本となった辞書であり、英語による表現を最も適切と判断できる他言語(仏語、独語、日本語等)に翻訳される。一つのコードには特定の医学的状態・状況を示した多言語の表現を持つことになる。各国の規制当局との情報交換に際し、コードを共有することにより、各国が使用している用語に変換することにより共通の医学的認識を持つことができる仕組みになっている。ここで重要なのは、英語を自国の言語の医学用語に翻訳することが最も重要になるが、これは、かつての様に個人個人の見解により、また、一定の条件を考慮に入れたり、落したりして医学用語辞書を使用しながら翻訳し、結果として地域、時期によりバラバラな状態・状況の表現となってしまっていたころとは、全く別な環境が構築されていることである。例えば、日本語においては、JMO(MedDRA Japanese Maintenance Organization)が、MedDRAの国際的な維持管理をICHやMSSO(Maintenance and Support Services Organization)と連帯し、MedDRAやその日本語版であるMedDRA/Jの維持管理や日本国内でのMedDRAに関連する情報および研修教育等の提供を行うなど、専門的機関が担い、高品質を保つ仕組みが整っている。
 

 

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執筆者について

草間 承吉

経歴 医薬品、医療機器、医薬部外品等の開発から製造販売後までの安全確保業務を黎明期から30年以上にわたり幅広く経験・管理・監督してきた。この間、業界活動においては製薬協PMS部会や東薬工医薬品安全性研究会、日薬連安全性委員会等でDSUやPMS担当者研修講座の設立等にも関与した。これらの経験を生かし15年前にPMSフォーラムを設立し、製薬企業等からの業務相談に対応しながら、指導・教育に努めている。 ※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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