医薬品の技術移転のポイント【第7回】

2021/12/17 品質システム

サイト変更の技術移転時のGMP/レギュレーション(軽微・一変)対応のポイントについて。

サイト変更の技術移転時のGMP/レギュレーション(軽微・一変)対応のポイント
1)軽微変更届(以降軽微変更)・一部変更申請(一変申請)の視点
2)品質面の評価の視点
 

 従来の技術移転は品質とGMPの両面の視点で良かったのですが、製造販売承認書に製造場所や詳細な製造方法を記載していますので、レギュレーション対応が必要になります。
その一つが、前回紹介したGMP適合性調査で適合を受けることでした。もう一つがその変更が軽微変更か、迅速一部変更申請(迅速一変)か、一変申請かのどれかに該当する場合です。
 この軽微一変対応がとても難しいのです。熊本県の化血研での承認書との齟齬に伴う一斉点検で各社が見直し、約7割に齟齬があり修正しました。そして「毎年齟齬確認をして同じ問題が発生しないように努めます」と顛末書を提出しています。ところがその後、和歌山県の山本化学工業、愛知県の松浦薬業、山口県の協和発酵バイオ、そして福井県の小林化工、富山県の日医工と続いています。その他にも多くの製造販売会社で承認書との齟齬が続出しています。つまり、このルールはとても厳守しにくいのです。もちろん意図的な違反も存在しています。このことを先ずは認識することが第一歩になります。冬のエベレスト登頂と夏の富士山登頂では準備も難しさも違います。会社の経営層や生産部門、品質部門のトップがそしてQA長がよく認識して対応することになります。
 トラブルは3H(初めて、変更、久しぶり)の時に起きやすいと言われています。実際、過去の大きなトラブルは3Hが多かったです。技術移転はまさに“はじめて”と“変更”ですので、いかにトラブルを生まないようにするかが問われています。そのためにはこの軽微・一変のルールを知っておくことが重要です。ルールは通知とQ&Aで理解することになりますが、それを知っているだけではうまく対応できません。数学の問題は公理と定理を知っていれば解けるはずです。しかし解けません。練習問題をたくさん取り組み、どう公理と定理を活用するかを学びます。軽微変更などのレギュレーションも同じで、実際のトラブル事例から学ぶことによって、理解を深めることができます。

1)軽微・一変の視点
 ・軽微変更 (過去2年以内に同一ラインでのGMP適合性調査あり)
 ・迅速一変
 ・一変申請
2)品質面の評価の視点
1)軽微一変申請の視点
関係する通知/事務連絡 平成17年2月10日 薬食審査第0210001号
「改正薬事法に基づく医薬品等の製造販売承認申請書記載事項に関する指針について」
別添1 化学薬品原薬の製造方法の承認申請書記載要領
別添2 化学薬品製剤の製造方法の承認申請書記載要領
別添3 生物学的製剤等(生物薬品(バイオテクノロジー応用医薬品/生物起源由来医薬品)及び特定生物由来製品)の製造方法の承認申請書記載要領
別添4 製造工程流れ図(原薬)
別添5 製造工程流れ図(錠剤)
別添6 製造工程流れ図(注射液)
別添7 製造工程流れ図(凍結乾燥注射剤)
製造販売承認事項記載整備届

 この通知が基本です。これを目を通して、何かあればこの通知を読み直すことになります。
 

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執筆者について

脇坂 盛雄

経歴 1979年エーザイ株式会社入社、9年間、品質管理と21年間、品質保証を担う。
専門領域はGQP品質保証、注射剤及び固形剤の異物対応、品質リスクの発見と低減対応 ・医薬品/食品の表示校閲、製品回収リスク回避対策 ・逸脱/苦情対応、変更管理(一変/軽微変更)対応。品質保証責任者(品責)、統括部長および理事を歴任し、2013年9月末に退職。
現在は企業のコンサル・顧問を行う傍ら講演会講師、書籍執筆などを精力的に行っている。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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