医薬品開発における非臨床試験から一言【第24回】

In vitroスクリーニング動態

創薬過程においては、さまざまなスクリーニング試験により、候補化合物を効率的に絞りこむ研究を行っています。しかし、試験の方法論と判定基準は企業固有のノウハウがあり、なかなか一般論は難しいところです。むしろ、固有のスクリーニング試験系から特徴的な創薬に繋がっていると自負する企業研究者もあります。

代謝物の安全性評価は薬物動態部門の大きな課題であり、さらには安全性部門の課題です。規制要件として、進化して成熟したICHおよびFDA等の考え方を理解して、代謝物の安全性に対応することが重要と思います。スクリーニング試験を含む創薬段階から、臨床試験を開始する段階に入り、そして申請段階までの着実な安全性評価を目指します。今回は、主に代謝物の安全性評価においてin vitro試験によるスクリーニング評価を取り上げ、方法論も含め理解を深めたいと思います。

例えば、ヒトで高曝露の代謝物が検出されたが代謝物標品の合成が極めて困難な場合に、「代謝物の安全性を科学的に評価する大きな目的」に対して、「代謝物の合成が困難」は評価しなくてもよい理由になりません。化学合成が困難なことは事実ですが、幾つかの代替的な評価方法が考えられます。
 ① 細胞画分、肝細胞などで代謝物を生合成し、抽出し精製はどうか
 ② あらゆる動物種で、肝以外も含めて、in vitroでの代謝を確認してはどうか
 ③ 高用量の動物投与で当該代謝物の曝露ができないか
 ④ 持続静脈内投与で曝露量(AUC)を増やせないか
 ⑤ ヒト試験で許される大量採血から、代謝物を精製し標品化はどうか
 ⑥ 標品の可能性を探り、活性測定で評価できないか
このように、動物試験を含めて多くの手段が考えられ、一方で「高曝露」での評価を科学的にどのように捉えるかは、創薬過程でのスクリーニング研究が大切となります。

投与された薬物は有効性を示すと共に、肝臓を中心とした薬物代謝酵素で代謝を受けて体外に排泄されます。臨床において、薬物代謝酵素は遺伝的要因による人種差、個人差、性差等が存在し、さらに、病態(複数疾患を含め)、併用薬、年齢および喫煙や飲食物等の環境要因の影響を受け、その程度は個人により異なります。医薬品等の化合物や生理的な内因性物質による酵素誘導等の代謝酵素量の変動も明らかとなっています。

代謝過程を評価するヒト肝試料としては、ミクロゾーム、S9、肝細胞、肝切片などがあります。肝臓の入手は、亡くなった方からの臓器提供によります。冷温の保存液で肝臓を還流した後に、肝臓ブロックをスライスした「肝切片」、あるいはホモジネートから肝臓画分を調製します。一方、肝臓を37℃温浴中で、血管系からコラゲナーゼ液での還流により浮遊肝細胞を調製して、次に細胞の懸濁液を凍結時の保存液に入れ替え、凍結保存したのが「初代培養肝細胞」になります。調製直後の肝細胞を用いて実験する場合もありますが、多くは液体窒素で凍結して輸送して、解凍して実験を行います。

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