ゼロから学ぶGMP【第7回】
5-5 サイトマスターファイル(PIC/S第4章から)
5-5-1 概要
前回は製品標準書(第7条)について述べました。GMP省令の順序だと、次は第8条の手順書ですが、ここではPIC/S 第4章 Documentation(文書)で作成しておくべき文章の一つとして取り上げられているサイトマスターファイルについて述べてみたいと思います。これはGMP省令には具体的には取り上げられていない文書ですが、「製造業者のGMPに関する活動を記述した文書」として定義されるもので、事例集のGMP0-13でも取り上げられています。「サイトマスターファイルとは何か」という問に対しては、「PIC/SのGMPガイドラインのパート1第4章に定められている製造所のGMPに関連した作業活動を記述した文書であり、製造所の品質システムを含む活動概要を記載したものであり、GMP監査に際し、製造所の品質システムを含む活動概要を端的に示すことができ、有用である。」としており、また「海外当局当からの査察等の際、この概念に相当する文書の提示を求められる可能性があることから、海外当局による査察等を受ける可能性のある製造業者は、可能な限りこの用語に対応する文書を準備しておくことが望ましい。」としています。
またこの文書は医薬品適合性調査申請時に添付すべきGMP調査用資料に代えて提出することが可能な資料です(平成25年12月2日事務連絡)。更に、この文書は当局の査察対応のみならず、製造販売業者等が製造所等の監査時にも利用できる有用な文書でもあります。
以上のようなことから、常に最新版を用意しておくことが勧められます。
5-5-2 サイトマスターファイルの内容
サイトマスターファイルに記載すべき事項については「Explanation Notes for Pharmaceutical Manufacturers on The Preparation of A Site Master File (PE 008-4 January 2011)」に詳しく記載されています。その概略を表1に示します。なお、この和訳についてはその内容を保証するものではありませんので、正確な内容については原文を参照していただくようにお願いします。
表1. サイトマスターファイルに記載すべき内容
製造所の一般的情報 | 名称、住所、連絡先等 | |
製造所の許可に関する情報(過去5年間の当局の査察リストを含む) | ||
医薬品以外の製品の製造に関する情報(あれば) | ||
品質システムマネジメント | 品質システムマネジメントの概略 | |
最終製品の出荷手順 | ||
供給業者及び契約先(製造委託、試験委託)のマネジメント | ||
品質リスクマネジメント | ||
製品品質照査 | ||
職員 | GMP組織図と職員数 | |
建物及び設備 | 建物 | 建物については製造所の規模、建物の数 製造エリアにおけるヒト、モノの動線図 清浄度区分を示した図及び差圧管理図 倉庫と保管エリア(取扱いに注意を要する、毒性の高い物、感作性の高い物及び危険性の高い物がある場合はそれも図示) |
空調システム | ||
製薬用水の配管図 | ||
その他のユーティティ(蒸気、圧縮空気、窒素等) | ||
装置 | 主たる製造エリアと品質管理エリアにおける機器リスト | |
製品に接触する機器の洗浄と衛生管理 | ||
コンピューターシステム | ||
文書管理 | 文書管理方法 | |
製造 | 剤型別の製品リスト | |
プロセスバリデーションのポリシー | ||
原料の管理と倉庫管理 | ||
品質管理 | 試験の内容の記載(物理学的試験、化学試験、微生物試験、生物学的試験) | |
配送、苦情、製品の欠陥、回収 | 配送については、配送中における環境管理方法(温度記録等) 苦情、製品の欠陥、回収についてはそれぞれの処理システム |
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自己点検 | 自己点検のシステムと基準、フォローアップの調整 |
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