ラボにおけるERESとCSV【第78回】

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7.483における指摘(国内)
前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。
 
■ NNN社 2019/8/23 483
施設:原薬工場


■Observation 4
ガスクロの全ユーザーが共通ログインしている。しかもクロマトのデータを上書きできてしまう。

★解説:

「データを上書きできてしまう」について:
再測定を行った場合に初回のデータ(電子記録)を保存・報告していないと「良いとこ取りをしている」と指摘される。「データを上書きできてしまう」との指摘は「良いとこ取りをしている」可能性があるとの指摘と考えられる。このような指摘はガスクロに限った問題ではなく、多くのラボ機器において指摘されうる問題である。

以下、本Observationの解説を行うが、まず始めにデータインテグリティに関する基本事項を説明する。

HPLC、GC、IR、UVなどはダイナミック・レコードの機器とみなされる。
ダイナミック・レコードの機器においては

  • 生データは電子記録であり
  • 電子記録を生データとして維持しなければならず
  • 維持する電子記録は、ダイナミック・レコード形式のオリジナル・レコードでなければならない

 なお、スタティック・レコードの機器であっても、電子記録を保存できるのであれば電子記録を生データとして維持していないとFDA査察において指摘される場合がある。監査証跡がなくても以下の条件であれば、良いとこ取りをしていないことを証明できるからである。

  1. 総ての測定が電子記録に残る
  2. その電子記録は削除できない
  3. 時刻調整の権限は現場にはない
    (この場合、電子記録のタイムスタンプは現場においてバックデートできないので、タイムスタンプの真正性を保証できる)

上記の説明に関する用語の定義を以下に紹介する。
◆生データ
PIC/S GMP 「第4章 文書化」における生データの定義

  • 少なくとも、品質判定に用いる全てのデータを生データと規定すること
  • 生データとなる電子記録を規定すること

厚労省「GMP事例集(2013年版)GMP20-5 」における定義

  • 最終結果を得るために使用した元となるデータ
  • 最終結果を得るに至った過程を含む記録
  • 最終結果を検証することができるもの

従来は生データを「最初にとらえた情報」と規定していたかもしれないが、GMPにおける現時点での生データ定義は上記のとおりである。

◆メタデータ
メタデータとはデータの意味を理解するのに必要な情報のことである。データの数値だけでは何を意味するのかわからない。たとえば「23」という数値は、「mg」といった単位表示のようなメタデータがなければ何の意味もない。データを収集した日時のタイムスタンプ、データを生成したテストや分析を実施した人のユーザーID、データ収集に使用した機器のID、監査証跡などもメタデータとなる。
 (出典:FDAのデータインテグリティガイダンス §3-1b)
メタデータも生データである。

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