医薬品開発における非臨床試験から一言【第8回】

ラット、マウス、イヌ、サルを動物実験に用いていますが、どのように解析すればヒトモデルに近づけられるのでしょうか。代謝過程について考えますと、哺乳動物の基礎代謝量は体表面積に比例して増加することが分かっています。そこで、アロメトリックスケーリング法が考案されました。肝臓の代謝クリアランスも同様の傾向を示し、体重当たりの体表面積の小さい小動物ほど大きなクリアランスを示し、半減期が短いとされています。

そもそもクリアランス(CL)とは、体内で薬物を除去すること、つまり血液から取り除く速さを表しており、代謝と排泄の速さになります。血中ではタンパク結合しているか(binded)、結合していないか(free)の2種類で薬物が運ばれています。薬物が肝臓に到達すると、タンパク結合していないfreeの薬物が取り込まれて代謝を受け、肝固有クリアランスになります。つまり、肝固有クリアランスとは、タンパク結合を考慮したクリアランスになります。

薬物動態を支配する要因は代謝だけではなく、薬物によっては、動物で予測したヒトの代謝クリアランスが、体表面積から予想されるより極端に小さかったり、逆に実験動物と同程度あるいはそれ以上に大きかったりします。この場合は、経口投与された薬物が、消化管で吸収された後に肝臓でどの程度の初回通過効果を受けるかなどの代謝の種差を推定します。そのためには、動物実験の結果に加えて、動物あるいはヒト肝臓のミクロゾームや肝細胞試料を用いたin vitroでの代謝速度の検討を行い、これらの結果を合わせてヒトでの体内動態を予測することが重要となります。

肝臓のin vitro試料について少し解説します。まず、肝臓をホモジネート(均一のジュース状態)にして、高速遠心分離(9,000xg)を行い、上清(Supernatant)のS9画分を得ます。沈殿は細胞核と組織断片を含みますので廃棄します。このS9を超遠心分離(105,000xg)して得られた沈殿がミクロゾーム画分、上清がサイトゾール画分になります。代謝研究には、膜タンパクのCYP酵素を含むミクロゾームを用いることが多く、また、ミクロゾームを含めて細胞液に溶解した代謝酵素を含むS9も使用されます。CYP酵素の代謝を研究するミクロゾームと、抱合酵素まで研究するS9になります。それぞれの研究で実験方法は異なり、目的に合った研究を選択します。

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