水環境中における医薬品及びパーソナルケア製品(PPCPs)に関する最近の動向について
2019/06/05
その他

記事投稿:日本エヌ・ユー・エス株式会社 川嶋 之雄
医薬品・動物用医薬品・医薬部外品・化粧品・香料・紫外線吸収剤・飼料添加物等は、英語の総称としてPharmaceuticals and Personal Care Products (PPCPs) と呼ばれています。これらは生理活性機能を持つように設計された化学物質であり、下水処理水等を通じて河川や湖沼の水系環境中に流出して、生態系やヒト健康に影響を及ぼすことが懸念されています。1990年代以降、国内外の河川水等の水系環境から多種類のPPCPsが検出されています。
PPCPsの野生生物への影響に関する議論は1990年代後半から始まり、イギリス(2003)、アメリカ(2009)、ドイツ(2008)では委員会を立ち上げてPPCPsの生態影響への対策についての議論を開始しました。環境毒性化学学会(SETAC)はヒトの医薬品及び動物医薬品の生態影響に関してペルストン会議を開催して議論を行った結果をまとめています。PPCPsの野生生物への影響例は極めて少ないですが、インド及びパキスタンでのハゲワシに対する抗炎症剤diclofenac (ジクロフェナック)の悪影響(重度の腎臓障害により死亡)、イギリスの河川でのピルの成分でもある17β-ethinylestradiol (17β-エチニルエストラジオール:EE2)のコイ科の魚(ローチ、Rutilus rutilus)に対する影響(オスのメス化)、カナダの湖を用いたEE2の魚類(主としてファットヘッドミノーPimephales promelas)の集団に対する悪影響(個体群の減少)の実験例が報告されています。
厚生労働省は、「新医薬品開発における環境影響評価に関するガイダンス」を2016年に通知しました。本ガイダンスは、「新規に承認される新有効成分含有医薬品の上市にともない、化学物質としての性状に由来する直接的及び間接的に生じる環境に対する負荷を推定し、その影響を評価して、ヒトの健康と生態系へのリスク低減に資することを主眼とする環境影響評価法について、その背景や基本理念を概説することを目的とする」としています。
環境省では、化学物質環境実態調査(黒本調査)において、一部のPPCPsの環境中濃度の把握を行っています。また、化学物質の環境リスク初期評価を行っており、これらの試験・評価の対象物質にPPCPsの一部が存在します。
国連環境計画((United Nations Environmental Programme、UNEP) の国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(Strategic Approach to International Chemicals Management、SAICM)において、「環境残留性のある医薬汚染物質 (Environmentally Persistent Pharmaceutical Pollutants、EPPP)」が新規政策課題 (emerging policy issues) として2015年にスイス・ジュネーブにて開催された第4回国際化学物質管理会議 (Fourth Session of the International Conference on Chemicals Management、ICCM4) にて採択されました。また、米国、カナダ、欧州各国、EU、WHO等においても様々な取り組みが行われています。
このような状況の下、PPCPsに関する専門家を登壇者とした日本内分泌攪乱化学物質学会(環境ホルモン学会)主催の第33回講演会が以下の要領で開催されますので、お知らせいたします。
日 時: 2019年6月15日(土)13:30~
会 場: 食品衛生センター 5階 講堂1-3
http://www.toshoku.or.jp/shikaku/kaijo/kaijoshoye.html
住 所: 東京都渋谷区神宮前2-6-1
テーマ : 水環境中における医薬品及びパーソナルケア製品(PPCPs)に関する
最近の動向について
コーディネーター:川嶋之雄
共 催: 日本学術会議
プログラム(敬称略)http://jsedr.org/L/L33.pdf
13:30~13:35 挨拶 川嶋之雄
13:35~14:10 講演1.PPCPs問題の発端と現状
井口泰泉(横浜市立大学特任教授)
14:10~14:45 講演2.PPCPsの環境中での存在状況
中田典秀(京都大学大学院講師)
14:45~15:00 休憩
15:00~15:35 講演3.PPCPsの水生生物への影響
井原賢(京都大学大学院助教)
15:35~16:10 講演4.PPCPsのリスク評価
山本裕史(国立環境研究所生態毒性研究室室長)
16:10~16:45 講演5.PPCPsの国内外の規制動向
西村哲治(帝京平成大学教授)
16:45~16:55 まとめ 川嶋之雄
参加登録が必要です。以下にアクセスしてください。
環境ホルモン学会
http://jsedr.org/L.htmlの中の「講演会」→「第33回」→「参加登録は、こちら」
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSepq3z2s59gDH9-mLQfiQWzxFvDYIuyD-cYtEpnxI3sxZWwxg/viewform
医薬品・動物用医薬品・医薬部外品・化粧品・香料・紫外線吸収剤・飼料添加物等は、英語の総称としてPharmaceuticals and Personal Care Products (PPCPs) と呼ばれています。これらは生理活性機能を持つように設計された化学物質であり、下水処理水等を通じて河川や湖沼の水系環境中に流出して、生態系やヒト健康に影響を及ぼすことが懸念されています。1990年代以降、国内外の河川水等の水系環境から多種類のPPCPsが検出されています。
PPCPsの野生生物への影響に関する議論は1990年代後半から始まり、イギリス(2003)、アメリカ(2009)、ドイツ(2008)では委員会を立ち上げてPPCPsの生態影響への対策についての議論を開始しました。環境毒性化学学会(SETAC)はヒトの医薬品及び動物医薬品の生態影響に関してペルストン会議を開催して議論を行った結果をまとめています。PPCPsの野生生物への影響例は極めて少ないですが、インド及びパキスタンでのハゲワシに対する抗炎症剤diclofenac (ジクロフェナック)の悪影響(重度の腎臓障害により死亡)、イギリスの河川でのピルの成分でもある17β-ethinylestradiol (17β-エチニルエストラジオール:EE2)のコイ科の魚(ローチ、Rutilus rutilus)に対する影響(オスのメス化)、カナダの湖を用いたEE2の魚類(主としてファットヘッドミノーPimephales promelas)の集団に対する悪影響(個体群の減少)の実験例が報告されています。
厚生労働省は、「新医薬品開発における環境影響評価に関するガイダンス」を2016年に通知しました。本ガイダンスは、「新規に承認される新有効成分含有医薬品の上市にともない、化学物質としての性状に由来する直接的及び間接的に生じる環境に対する負荷を推定し、その影響を評価して、ヒトの健康と生態系へのリスク低減に資することを主眼とする環境影響評価法について、その背景や基本理念を概説することを目的とする」としています。
環境省では、化学物質環境実態調査(黒本調査)において、一部のPPCPsの環境中濃度の把握を行っています。また、化学物質の環境リスク初期評価を行っており、これらの試験・評価の対象物質にPPCPsの一部が存在します。
国連環境計画((United Nations Environmental Programme、UNEP) の国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(Strategic Approach to International Chemicals Management、SAICM)において、「環境残留性のある医薬汚染物質 (Environmentally Persistent Pharmaceutical Pollutants、EPPP)」が新規政策課題 (emerging policy issues) として2015年にスイス・ジュネーブにて開催された第4回国際化学物質管理会議 (Fourth Session of the International Conference on Chemicals Management、ICCM4) にて採択されました。また、米国、カナダ、欧州各国、EU、WHO等においても様々な取り組みが行われています。
このような状況の下、PPCPsに関する専門家を登壇者とした日本内分泌攪乱化学物質学会(環境ホルモン学会)主催の第33回講演会が以下の要領で開催されますので、お知らせいたします。
日 時: 2019年6月15日(土)13:30~
会 場: 食品衛生センター 5階 講堂1-3
http://www.toshoku.or.jp/shikaku/kaijo/kaijoshoye.html
住 所: 東京都渋谷区神宮前2-6-1
テーマ : 水環境中における医薬品及びパーソナルケア製品(PPCPs)に関する
最近の動向について
コーディネーター:川嶋之雄
共 催: 日本学術会議
プログラム(敬称略)http://jsedr.org/L/L33.pdf
13:30~13:35 挨拶 川嶋之雄
13:35~14:10 講演1.PPCPs問題の発端と現状
井口泰泉(横浜市立大学特任教授)
14:10~14:45 講演2.PPCPsの環境中での存在状況
中田典秀(京都大学大学院講師)
14:45~15:00 休憩
15:00~15:35 講演3.PPCPsの水生生物への影響
井原賢(京都大学大学院助教)
15:35~16:10 講演4.PPCPsのリスク評価
山本裕史(国立環境研究所生態毒性研究室室長)
16:10~16:45 講演5.PPCPsの国内外の規制動向
西村哲治(帝京平成大学教授)
16:45~16:55 まとめ 川嶋之雄
参加登録が必要です。以下にアクセスしてください。
環境ホルモン学会
http://jsedr.org/L.htmlの中の「講演会」→「第33回」→「参加登録は、こちら」
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSepq3z2s59gDH9-mLQfiQWzxFvDYIuyD-cYtEpnxI3sxZWwxg/viewform
【記事執筆者略歴】
氏名 :川嶋之雄(カワシマユキオ)
学歴 :1981年3月 東京大学農学部水産学科水産海洋学講座 卒業
職歴 :1982年4月 日本エヌ・ユー・エス株式会社 入社
:2002年7月 同社 環境設計ユニットリーダ
:2003年7月 同社 理事TRM部門長
:2005年6月 同社 取締役
:2009年6月 同社 常務取締役
海洋生物、海洋環境及び化学物質の人健康や環境への影響に関する豊富な専門知見と国内外の専門家との緊密な情報網をもとに、環境保全並びに経済発展に資する的確なコンサルティングを提供している。
環境省が実施している化学物質の内分泌かく乱作用に関するプログラム(SPEED’98、ExTEND2005、EXTEND2010、EXTEND2016)に1999年より事務局として参画している。
また、2018年6月より環境ホルモン学会の理事を務めている。
氏名 :川嶋之雄(カワシマユキオ)
学歴 :1981年3月 東京大学農学部水産学科水産海洋学講座 卒業
職歴 :1982年4月 日本エヌ・ユー・エス株式会社 入社
:2002年7月 同社 環境設計ユニットリーダ
:2003年7月 同社 理事TRM部門長
:2005年6月 同社 取締役
:2009年6月 同社 常務取締役
海洋生物、海洋環境及び化学物質の人健康や環境への影響に関する豊富な専門知見と国内外の専門家との緊密な情報網をもとに、環境保全並びに経済発展に資する的確なコンサルティングを提供している。
環境省が実施している化学物質の内分泌かく乱作用に関するプログラム(SPEED’98、ExTEND2005、EXTEND2010、EXTEND2016)に1999年より事務局として参画している。
また、2018年6月より環境ホルモン学会の理事を務めている。
コメント
/
/
/
この記事へのコメントはありません。
コメント