医療機器の生物学的安全性 よもやま話【第65回】

2025/05/16 医療機器

前回に引き続き国内通知のアップデートについて

国内通知のアップデート(続き)

 先日の国内通知のアップデートは、今予定されているISO 10993-1の改訂に先んじて実施されました。それでは新しいISO 10993-1はいつ発出されるのかということですが、ISOは下図のような体系で、改訂された後リリースされます。

 ISO 10993-1は、現在はまだDISの段階とのことですので、まだしばらく時間がかかるのかもしれません。今回は、トピックスとなる事項のうち、吸収性を有する医療機器や分解物の生物学的安全性評価について、盛り込まれるであろうと思われる事項を考えてみたいと思います。

 まず吸収される可能性のある医療機器のひとつとして、経皮的に塗布されるようなクリームや滴材などでは、構成成分による全身毒性の可能性を考慮するような記載が盛り込まれるようです。医療機器で、このようなタイプのものは少ないと思いますが、経皮的に用いられるジェルなどが該当するのかもしれません。国内でこのようなジェルは雑品扱いだったかと思いますが、他の医療機器とセットされる場合は、医療機器の一部とされますので、評価が必要だということでしょう。その他でも血管内に用いられる機器に潤滑用として用いられるジェルも同様の考え方を適用した方がよろしいのではないかと思われます。全身毒性だけでよいのかというと、いささか疑問は残りますが、実際には新規の物質や添加剤が用いられるケースは少ないのでしょうけれど、構成成分を明らかにして、評価できる場合が多いのではないでしょうか。

 臨床使用中に重合や分解等が生じることを意図している医療機器の場合、機器の状態が変化することを考慮して評価する必要があり、例えば局所で重合するタイプの吸収性の創傷被覆材では、当初の構成成分、中間反応生成物、完全重合物と分解産物を考慮する必要があるとのことです。また、医療機器が意図して吸収/分解するように設計されていたり、使用中に分解産物が放出されたりする場合などでは、分解による影響を評価する必要があるとされています。そして、このような場合、分解産物と、分解率やその範囲に影響するパラメーターを明らかにし、分解することを意図しているのであれば、予想される分解メカニズムを明らかにすることが求められます。

 

 

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執筆者について

勝田 真一

経歴 一般財団法人日本食品分析センター 理事
1986年財団に入所し、医療機器、医薬品、食品、化粧品及び生活関連物資等の生物学的安全性評価に従事。1997年佐々木研究所研究生として毒性病理学及び発癌病理学研究に携わる。1999年東京農工大学農学部獣医学科産学共同研究員として生殖内分泌学研究。日本毒性病理学会評議員、ISO/TC194国内委員会、ISO/TC194 WG10 Technical ExpertやJIS関連の委員などを歴任。財団では薬事安全性部門を主管し、GMPやGLP対応を主導。情報システム部門担当を歴任。大阪彩都研究所長を経て現在北海道千歳研究所長。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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