モノづくりのモチベーション・マネジメント【第4回】

はじめに
 
 近年、企業を取り巻くリスクは、複雑で多面的になりつつあります。これまでの経験だけでは、その管理が難しくなってきました。実際、問題点が明らかになってから検討するケースも多々見られます。さらに、一度のリスク管理失敗で致命的な影響を受ける場合もあります。特に、食品、医薬品など人の健康・生命に係わる業界においては、いっそうその管理が求められます。リスク管理の目的は、1)社会および顧客への被害を与えない、2)その被害を最小限に抑える。3)企業論理ではなく、社会的視点に立って判断する。そのことによって企業の社会に対する信頼を得て、企業の存続を図る。ことだと思います。新聞、テレビの報道で、会社の存続を維持するために、事実、情報の隠ぺいが指摘されることがあります。これは、目的と手段を真逆に捉えている企業論理ではないかと考えます。
 
 2000年6月に参天製薬は、異物が混入された目薬が送りつけられ金銭を要求されるという事件を経験しました。経営トップは、まず「消費者(患者さん)の安全・安心を第一に」考え、市場(薬局、薬店)から一般用目薬の全製品を自主回収しました。この判断の根底には、「肝心なことは何かを深く考え、どうするか明確に決め、迅速に実行する」という経営理念がありました。企業論理ではなく、消費者の方の立場に立ってという基本がありました。回収後は、異物混入されにくい、不正加工防止を施した製品を一日も早く、消費者の皆さんにお届けする。これが筆者の生産本部長としての使命でした。ここにも、工場のみならず、研究所、本社スタッフなど社員一同が、お盆休みも返上し、協力してくれたのも何を大切にして仕事をしているのかを共有できていたからだと考えています。
 
1.リスクマネジメントのプロセス
 
 リスクマネジメントを実践するためのプロセスをご紹介します。
まず、1)リスクマネジメント体制の確立が必要です。リスクマネジメントに関する方針が制定されている。経営トップの思いが述べられた方針です。参天製薬の経営トップは、「大袈裟でもいいから、些細なことでも悪い情報は、迅速に上司に報告するように、直接社長でも良い」と常々、口にしていました。これもリスクマネジメントの方針であると考えます。そして、リスクマネジメントを実践する組織・体制を明確にし、全社に周知徹底することです。
 
 次に、2)企業活動のどこにどのようなリスクがあるのか洗い出しする。洗い出す方法としては、ブレーンストーミングにより、各部門のリスクを抽出することが必要です。企業リスクを考える視点としては、企業の事業戦略に係わるもの、事業の実行(操業)時、いわゆるオペレーション・リスク、財務リスク、そして自然災害を含むハザード・リスクなどがあげられます。3)洗い出したリスクを分析し、リスクの発生頻度および損害の規模を予測することにより、企業の財務状況への影響度を評価する。横軸に発生頻度、縦軸に影響度合いを示したリスク・マッピングを作成し、グルーピング化してその対応を検討することが行われます。4)リスクの対応・処理の検討です。リスクの対応・処理に係わる費用を最小かつ経常化するための最善の処理をします。5)リスク・コントロールとして、リスクを除去・軽減したり、損害の拡大を防ぐ防災対策などを実施する。3.11東日本大震災以後、防災より減災に重点がおかれるようになりました。6)リスク・ファイナンスでは、リスクが現実のものとして発生した場合の経済的損失を自己負担する。保険などを利用することにより、経済的損失を第三者に委ねる。結局は、自己負担の一部に変わりはないでしょう。7)結果の検証では、事故の評価、保険料の実績、防災・減災コストなどを検証し、リスクの対応・処理手段の見直しをします。

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