【和訳】ファーマ4.0とは?

David Margettsによるインターフェックスジャパン基調講演より抜粋と追記
(2018年6月27日東京にて)

 
【注記】本記事については、まず著者の英語原文を掲載し
その後(株)シーエムプラスによる全文和訳を掲載する予定です。
・8/17(金)…原文第1回
・8/24(金)…原文第2回
・8/31(金)…和訳文(本記事)


要旨:
「モノのインターネット(IoT)」やインダストリー4.0という言葉を聞いたことがある人の多くは、こうした技術主導の取り組みが、伝統的な製造方法、設備機器、プロセスにすでに急激な変化を起こしていることにも気付いているかもしれない。では、製薬業界に対するインダストリー4.0の関わりとは?また、未来への道のりとは?
こうした構想の実現に向けて、ロボットの利用、自動化、インターネット接続式組み込み型センサーおよび統合型エンタープライズソフトウェアといった複雑かつ未来的な複合技術が組み合わさって工程を動かし、リアルタイムで判断を下し、現在はヒトが介入しているロジックを更新するといった「最終状態」を思い描くことが課題となる。この素晴らしいビジョンの理解は容易ではない。特に大切な医薬品の製造で使われるソフトウェアのテストや管理と慎重な工程管理によって厳しいGMP規制の要件を満たさねばならない製薬業界にとっては特にそうした劇的な変化は快く思われないかもしれない。
本稿では、ファーマ4.0構想について分析と紹介を行い、また、未来の工場実現に向けた道のりの中で企業が既に今日歩みを始めている取り組みについて説明する。



さて、ファーマ4.0とは?
世界規模でインダストリー4.0は未だ初期段階にあるというのが現状であり、意味の厳密な定義や特定の業界に対する今後の結果は不明であるが、その語自体は、物理的工程や機器類をデータや情報システムに深部まで接続させるという現代における製造の発展の全体像をとらえる際に有用である。管理、視認性、理解、予測性そして製造へのフィードバックの改善といったデジタル化に関連する大きな恩恵を得ることと、最終的にはシステムが自動応答型となり今日のマニュアル型および半マニュアル型の工程管理で成し遂げ得るよりさらに高レベルな性能達成を実現することが目標である。この、データに関する発展の道のりにおける後期の段階では、集約により利用可能となる今より巨大なデータセットの評価を行う人工知能(AI)のような高度な計算処理が必要となり、これを通じて工程についてリアルタイムで学習、適応作業を行って条件やより長期的なトレンドを変更させることができるようになる可能性がある。
インダストリー4.0を製薬業界仕様にしたものがファーマ4.0であり、所定の規格に焦点を当てる生産から、継続的評価と管理を行い、オペレーション各所のシステムから取得した進行形のデータや情報に基づき工程が自己調整を行うシステム化された手法への転換を意味する。このコンセプトは本業界において10年以上前から始まったQuality By Design (QbD)およびProcess Analytical Technology (PAT)の原則に則って築かれたものだが、電子システムから情報を取り出し、データを高度な管理に役立てるということが始まったのはつい最近のことである。基礎的なデータプラットフォームが導入されて初めてファーマ4.0の世界は現実化し、そうなるとヒトの作業員とともに稼働するツールや装置を使用して有用性や認識力を高めることができ、またソフトウェアを使用して現在進行形で行われている生産について自己学習を行い、改善や変更に向けて課題を浮き彫りにしたり、提案や対応の実施を行うことができるようになる。ファーマ4.0の能力からくる利点は相当なものであり効率性に限定されないが、マニュアル的介入を大幅削減しデータ評価を行うヒトの限界を超えることでより高レベルな品質を可能とする。この目的を持つことが製薬業界において特に重要であるのは言わずもがなである。


図1:ファーマ4.0とは?

上の図では、インダストリー/ファーマ4.0の核となるのは情報やナレッジに向けてデータ照合や利用を現代化しシステム化させるための道のりだという点が示されている。枠線部を見ると、製薬業界の大半の企業において紙のシステムが今もなお健在でありコンピュータ化の段階すら完了しておらず、このレガシーを更新することがより高度なデータ利用の主要な前提条件となることがわかる。


ファーマ4.0の出発点はインダストリー3.0である
平均的なアジアの製薬企業においてファーマ4.0の一環として議論される現代的技術は難しく、高額で手が届かないと思われるかもしれない。だが、この採用を容易にしてくれるITシステムの設計および実装については段階を踏んだアプローチが存在し、今日の製薬に特化したソフトウェアは完成度も高くまたいつでもすぐにでも利用可能である。このプラットフォーム導入に際しては、現在の事業面でのニーズや課題に焦点を当てた構造的かつ論理的なシーケンスが必要であり、このプラットフォームによりまずは今日において最優先される利益が、次いで今後必要となる能力がもたらされることとなる。現代的エンタープライズITの全体像を理解するための良い出発点は国際計測制御学会(ISA)(ISA, 2018)であり、ISAモデルは製薬企業の特定の層で使用されるITシステムを定義するものである。

図2:多くの製薬企業にとっての情報をめぐる現状

上の図では、主要なサプライチェーンと製造工程について、それぞれ営業部門、工場、作業現場のどこに位置するかが示されている。ITシステムを持たない企業にとって電子情報システムの欠如は例えば下記のような様々な課題を引き起こす。
 
・計画が非効果的である
・製造性能が不明である
・品質性能が不明である
・作業現場での作業の可視性に乏しい
・データが不十分または信頼性に乏しい中での出荷判定
・事業改善に役立つ情報の欠如
 
大半の企業にとって少なくとも一部のレベルや領域では今でも紙のシステムに頼りながら正しい製品を正しい数量と費用で生産しているが、この紙のシステムは時宜に適った、または正確な情報の欠如を理由とするオペレーション上の問題の根本原因になることも多い。
多くの生産や品質の責任者にとっては、生産要求に厳密に応えるのは不可能というのが現状であり、絶えずストレスにさらされつつ製品の出荷を行いまた大半の時間を火消しさながらの問題の事後解決に費やしている。また、問題の根本原因を解決したり、マイナスのトレンドや信頼性に欠けるサイクルタイムに充分に対応するための情報もない。というわけで、このシナリオはインダストリー3.0でも対処できないオペレーションとみるしかない。では、どうすればファーマ4.0に移行していけるだろうか?

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