知的財産の基本から知財ミックスまで【第20回】

 

部分意匠について

 こんにちは、弁理士法人ブランシェ国際知的財産事務所の弁理士 鈴木徳子です。
 今回は意匠特有の制度である、部分意匠について説明します。

1.制度趣旨
 意匠法(定義)第2条1項は、意匠を次のように定義して、意匠に「物品の部分」が含まれることを明確にしています。
 意匠とは、「物品(物品の部分を含む。第8条を除き、以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。」

 部分意匠制度は、1998年(平成10年)の意匠法改正によって導入されました。それまでは、「物品」が独立した製品として流通するものとして解されていたことから、条文上、意匠は「物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。」と定義され、物品の部分は意匠に含まれていませんでした。

 しかし、独創的で特徴ある部分を取り入れつつも意匠全体としては非類似とすることにより意匠権侵害を回避するような巧妙な模倣が多発したことから、意匠の保護を強化すべく部分意匠制度が創設されました。
 これにより、全体形状としてはありふれたものであり意匠登録が難しいような場合も、一部分の形状等に特徴があればその部分を部分意匠として保護することが可能となりました。今では、部分意匠は多くの企業に活用されています。

2.実例
 下記の図面は、アップル社の携帯情報端末(アップルウォッチ)に関する意匠権の斜視図及び使用状態を表す参考図です。(意匠登録第1739450号)

 上記意匠権の権利範囲は、実線で表された部分となります。
 部分意匠の願書では、上記の図のように、権利化を図りたい部分について実線で描き、その他の部分を破線で描いて特定することが多いです。
 そして、願書の【意匠の説明】の欄に「実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」と記載します。
 【意匠に係る物品】の欄には、物品全体としての物品名を記載します。上記例では、たとえ権利化を図る部分がアップルウォッチの表示面の形態であっても、【意匠に係る物品】の欄には「携帯情報端末」と記載し、「携帯情報端末の表示面」とは記載しません。
 

 

 

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