【第48回】Operational Excellence 実行の勘どころ 、“変革推進、品質は儲かる”

改善テーマを見つける 価値流れマップ Value Stream Map(その1)

 第34回より、「変革推進、品質は儲かる」とのテーマで、OPEX実行に関する紹介をしてきました。これは2022年秋に開催したGMP Platformセミナーでお話した、「一歩進んだ業務改善、納得感あるスタート 〜活動の仕組みづくり」をベースにしています。業務変革やプロジェクトでいかに結果を出すかの勘どころで、通常業務においても活用できる内容です。
 前回までは、「周囲を巻き込み、一緒に考えるスキル」(第45-47回)でした。関係者をうまく巻き込んでプロジェクトを成功に導くソフトスキルの話でした。周りの人々の意見やアイデアの聞き方、付箋を使っての視覚化がポイントになることをお伝えしました。

【簡単ではないテーマ探し、ネガティブモード、実は宝の山】
 今回から改善テーマ、プロジェクトテーマの探し方についてです。改善テーマはトップダウンで降りてくる場合と、ボトムアップで検討しなくてはならない場合があります。ボトムアップによるテーマ選択は自由な反面、本当にそれでよいのかどうか選択が難しいものです。
 GMP関連のみなさまは、逸脱報告や監査で指摘された事項があれば、それらを優先対応します。これらは改善テーマやプロジェクトではなく日常業務として実施されることが多いです。組織的にもルーティン業務なので、手順や実施担当は決まっています。細かな指示や合議をするまでもなく、自然な流れの中で業務が実行されます。
 一方で、「全体の業務フローを見渡してさらに良いものにしよう」、「業務効率をさらに改善していこう」となった途端に、テーマ選びは難しくなります。より良くするのは賛成だけど、余計な仕事を引き受けるのは遠慮したい。無言の反論モード(ネガティブモード)になる場合があります。反論モードとは言い過ぎかもしれませんが、そのような職場の雰囲気を皆さんも経験したことはないでしょうか。
 私のようなOPEXを担当にする人間が「業務改善をするぞ」と職場に乗り込むと、少なくとも歓迎(ホーム)ではなくアウェイの洗礼を受けます。「それ、今やるの?」、「目の前の逸脱処理が先でしょ」、「監査報告の期日が迫っている」、「機器の更新に伴う手順書改訂がある」、「新しく入った人に研修する必要がある」など、あれこれ現状を語られます。私たち外部の人間は知っています。みなさんは目の前のルーティン業務で忙しいのです。仕事は毎日降ってきて、やってもやっても途切れることはありません。そして1週間、1ヶ月、1年があっという間に過ぎるのです。私もそのような職場環境で30年以上働いてきました。ルーティン業務が忙しい中で、改善テーマを探して、業務変革を推進していくというのです。業務負荷をさらに増やすような印象を与えます。
 もう一つこの分野に関する日本企業の特殊性があります。私が経験した多くの製造業では、「過去にTQCのような品質改善活動はやっていた」、「今も(細々と)現場改善活動は続いている」という状況が少なからずあります。改善活動は製造部門中心という声もあります。それらは効果があったのですかと尋ねると、「昔(昭和の時代)は全員参加で活発でした。工場全体の改善発表会も行われていました。今はほとんど活動していないです。あまり機能していないです。」との話になります。過去にはやっていた、機能していたという話です。一方で、日本的な現場改善活動を知らない世代も多くなりました。そこで改善活動は過去のもの、機能していないものを今更やるのか、との疑問も加わります。「目の前のルーティン業務で忙しい+今更やるの」という反論モードです。これがよくある私たちOPEXコンサルタントが受けるOPEX的アウェイの洗礼という(私が勝手に名付けた)ものです。
 このようなOPEX的アウェイの洗礼を受けると、私たちOPEXコンサルタントはとても嬉しくなります。それは、この企業組織には宝の山が眠っていると確信できるからです。埋蔵金のありか発見です。大変ですよねと言いながら、心の中でウキウキします。目の前のルーティン業務が忙しい、過去にはやっていたが今はやっていないとの語りには、2つの埋蔵金情報の手がかりがあります。1つは、実は目の前の業務を少し整理見直すだけで、宝の山の一部を発見できます。2つ目は、過去にやっていた経験があるので、変革業務を行うベースがあるということです。改善活動へのスイッチが入ると、皆さんは期待以上の成果を生み出します。スイッチが入ったときの職場のみなさんはすごいです。そしてやり遂げたときの笑顔が、私たちOPEXコンサルタントのモチベーションとなります。
 職場の反論モードはネガティブサインではなく、ポジティブサインです。第34回、第35回で紹介した、「変革推進、品質は儲かる」に直結する部分です。ルーティン業務の中にこそ、さまざまな改善チャンス、宝の山が埋まっているのです。改善リーダーとなる方には、このポイントを是非とも知っていただきたいと思います。

<図48-1 変革推進のキーワード、品質は儲かる>

 

 

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