医薬品のモノづくりの歩み【第25回】

「モノづくりカルチャー」と生産性(5)

 今回は、前回の流れで製造原価の労務費に影響するロスの中のチョコ停ロスについて紹介しましょう。
チョコ停とは、設備が自動運転している時に‶チョコっと″停止する状態のことで、本格的な故障ではなく一時的なトラブルにより、設備が短い時間(一般的には10分以内)の停止状態になることを言います。良くある事例では、打錠機の自動運転中の粉取り機での錠剤の詰まりや昇降リフターの位置ずれによる停止、バイアル瓶が充填中に搬送ガイドに引っかかって停止することや包装ラインでのシート位置ずれ停止、錠剤シュート詰まりや包材シート供給不良などが挙げられます。
このようなチョコ停は、復旧が簡単にできるため対策が後回しになってしまい、定量的なデータを取ることも難しいということから、慢性化する傾向になり、その結果、時間的なロスを生むことで相応の労務費の無駄が発生することになります。
設備トラブルが発生する要因は、図1に示したように、安全衛生で良く知られているハインリッヒの法則(労働災害における経験則の一つで、1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300のヒヤリハットが存在するというもの)に似ていると言えます。設備が故障する前には、チョコ停や性能低下が多発しており、更にその前には、その原因となりうる摩耗やガタなどの微欠陥が日常頻発している状況として捉えることができます。安全管理では、重大災害を発生させないために、それらの要因であるヒヤリハットをなくしていくという考えが定着して実施している一方、設備保全においては、トラブル件数のみ管理しており、それらの要因については管理が十分できていないことがあります。 

図1 設備トラブルの発生要因とその頻度の関係図

 そこで、設備故障の発生を招かないように、設備の兆候をいち早く発見し、その対策を講じることです。先ずはチョコ停が慢性化しないようにすること、更にその前には摩耗やガタなどの微欠陥に伴う設備トラブルを事前に察知することが大切です。これらトラブル要因を定量的に捉えて日常的に管理し、異変が起きたら重点管理していく仕組みをつくる必要があります。 
例えば、チョコ停が設備の安定稼働にどの程度影響しているかを稼働率の指標を用いて定量的に評価して、対策が後回しにならないよう傾向を掴みます。稼働率は、稼働時間に非稼働時間を足した時間と稼働時間の比率で表されます。分母の非稼働時間には、チョコ停や設備故障などのような予想外非稼働時間と型替えや清掃、生産調整などの計画停止時間があります。
従って、チョコ停が多いほど、分母が大きくなり稼働率が低下します。つまり、所定の時間で出来上がる製品量が減少しますので、必要量の供給を生産するための時間が延長することになります。

稼働率(%) = 稼働時間 稼働時間 + 非稼働時間  × 100

※非稼働時間: チョコ停、設備故障、材料待ち時間、型替え、切替え など

 

 

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