WFI製造プロせすへの思い【第15回】

 これまでになかった、あるいは公に認められなかった制度を新たに認めるとき、既存制度と「同等かそれ以上」、どのような分野でもよく聞くことです。
 新しい制度によって、従来制度では起こらない筈だったトラブルが起こっては、「責任が問われ兼ねない」と考えるからでしょう。公の機関が新しい制度を認める際は、この表現になり勝ちです。行政当局が、人の健康に関わるWFI製造法に対して慎重になることも理解できます。
 筆者はこの仕事を始めた頃、蒸留器へ流入させて良い不純物濃度が、明らかにされていないことに不安を覚え、25年前にチャレンジテストを実施しましたが、この時の負荷濃度に対して、不純物濃度が検出限界濃度未満に至らなかったことから、不安は解消されず、現在に至っています。



1. 同等かそれ以上
 欧州薬局方において、2017年4月より“became effective”となった“revision of monograph Water for injections (0169) ” においても、新しく採用するWFI製造法に対して、© Pharmeuropa | Useful information によると、that is equivalent to or of a better quality than WFI described in the Ph. Eur.”を求めています。
 つまり、膜分離によるWFI製造は、従来、Ph.Eur.が収載してきた蒸留器による方法と同等もしくはそれ以上の性能を求めているのです。
 万が一に、具体的には、蒸留器以外の方法で製造したWFI中にendotoxinが、3極(日・米・欧)薬局方に収載される限度値0.25EU/L以上に検出されるようなことがあったとき、改訂したことによる責任を問われたくないのです。ここに、EU当局の本音を垣間見ることができます。
 
2. 高純度精製水Highly Purified Water
 EU当局は、JPとUSPが、二十世紀のおわり(1988年~)に膜処理によるWFI製造を認めても、これらへはHighly Purified Water と位置づけ、容器洗浄水としての使用は認めましたが、WFI仕込み水に使うことを認めませんでした。
 WFI製造は、“only distillation ” とし、水を蒸発させた後に凝縮させるという不純物分離方法に対して厚い信頼を託してきたのです。
 
3. EU当局の本音は
 EU当局はWFIの製造法に対し、従来法である蒸留法を続けてゆきたいのが本音と思われます。今回の “revision of monograph Water for injections (0169) ” へ至った理由として外国の薬局方においてROやUFが認められていること、および他の産業分野で従来Ph.Eur.が求めてきた性能(水質)と同等かそれ以上が達成されていることを挙げています。
 つまり、EU当局は、“only distillation ”を続けたいけれども、世界視野から見て、他局(日・米)が認めているのであれば、「同等かそれ以上」という「但し書きを付加して容認しよう」ここが本音と思います。
 
4. WFI製造プロせすへの思い
 筆者は「蒸留」という不純物分離操作に対して、「原水が蒸留水へ混ざることはないのか?」この極々「素朴な疑問」を持ち続けて、このコラムを昨年始めました。蒸留器の絶賛はあっても、蒸留器の不安材料は公にされることはありませんでした。
 このコラムの中では、何回かに渡り蒸留器をWFI製造として使う際の懸念材料を、問題提議してきました。

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