医薬品のモノづくりの歩み【第22回】

「モノづくりカルチャー」と生産性(2)

 今回は、医薬品製造における生産性について、少し詳しく触れましょう。
一般的に、製造業では工場などの設備や労働力など生産活動に投入した資源に対し、より多くの製品を生み出すことを生産性が高いということになります。つまり、生産性とは、産出量と投入量の比率で表すもので、少ない投入量(インプット)から、より多くの産出量(アウトプット)が得られるほど生産性が高いことを示すことから、生産活動の効率性を計る指標として利用されます。分母・分子の対象を何に置くかによって生産性を評価する意味合いが変わってきます。例えば、労働力1単位の産出量で表される生産性は、労働生産性と呼ばれ、設備など資源1単位当たりの産出量で表される生産性は資本生産性または設備生産性と呼ばれます。いずれも、一定の資源からどれだけ多くの産出量や付加価値を生み出せたのかを評価します。
 医薬品の「モノづくり」に視点を置いた生産性を同様に表した場合、図1のように表現することができます。

図1 医薬品製造での生産性向上の意味

 分子のアウトプットである「生産高」は、分母の投入資源によって製造された医薬品の出来高で、例えば逸脱、トラブルの発生を抑え、収率を向上させることにより上げることができます。そして、分母の「投入資源」は、ここでは、製造原価の要素である直接材料費や労務費、間接費などであり、原材料の購入価格の削減や作業性改善による労務費の削減、経費の節約などにより下げることができます。その結果、この数値が上がることを「生産性向上」と称します。
生産性を向上させる標準的なパターンは、図2のように分けられます。
まず、1つ目は、投入資源の削減です。分子の生産高は変わりませんが、生産するために投入する資源を下げて向上させるパターンです。投入資源を下げる取り組みがこのパターンで、例えば、経費節減や原材料のロスの削減などが挙げられます。
2つ目は、生産高の増加です。これは、同じ投入資源で生産高を上げるパターンで、製造ロスを少なくして収率向上させるケースです。不良発生防止や品質向上への技術改良などが代表的な取り組み例になります。
そして、3つ目は、規模縮小です。生産規模を縮小することで、生産高は下がりますが、それ以上に生産規模を縮小して投入資源を下げ、全体の生産性を向上させるパターンです。例えば、生産ラインの集約や人員削減、ロットスケールを縮小するなど、正にリストラ策がこのケースに当てはまります。
最後の4つ目は、規模拡大です。3番目のパターンとは逆に規模を拡大するケースで、分母の投入資源は増加しますが、それ以上に生産高を上げることで生産性を向上させるパターンです。 設備投資をしてロットスケールを上げるなど、生産量の増加を狙った取り組みが例として挙げられます。

図2 医薬品の「モノづくり」における生産性向上のパターン

 

 

執筆者について

経歴 ※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

連載記事

コメント

コメント

投稿者名必須

投稿者名を入力してください

コメント必須

コメントを入力してください

セミナー

eラーニング

書籍

CM Plusサービス一覧

※CM Plusホームページにリンクされます

関連サイト

※関連サイトにリンクされます